2025.03.28

スポニチアネックス

【高松宮記念】“初の女性調教師”前川師 モズメイメイで初G1参戦!厩舎一丸大舞台へ

 馬も人も話題満載のカードだ。芝スプリント春の頂上決戦「第55回高松宮記念」(30日、中京)は27日、出走馬が確定した。5日に厩舎を開業したJRA初の女性トレーナー前川恭子師(47)がモズメイメイでG1初チャレンジ。先週JRA初勝利を挙げ、いい流れで週末を迎える。同レースは28日に枠順が発表される。

前川恭子調教師とモズメイメイ(撮影・亀井直樹)

 開業から3週間あまり。早くも前川厩舎にG1初勝利のチャンスが巡ってきた。定年引退の音無師から引き継いだモズメイメイを起用する。前川師は「馬主さん(キャピタル・システム)や音無先生に感謝の気持ちしかありません。預けてくださった、その期待に応えられるよう厩舎一同、頑張っています」とストレートに意気込みを伝えた。

 23年チューリップ賞、葵S、24年アイビスSDと重賞3勝の実績を誇る5歳牝馬。転厩後、状態をチェックした上で調整方法に変化を加えた。ダートコース(主にBコース)の調教を取り入れ、フラットワークで運動量を増加。「乗り込み量を増やすことで(馬を)柔らかくすることを心がけています。彼女なりに状態は上がってきました」と納得の表情を浮かべる。

 いい流れでG1ウイークを迎えた。先週は18日に高知の交流戦(竜王盃=サンライズアレス)で初勝利を挙げると23日に阪神4R・3歳未勝利(ミトノオルフェ)でJRA初勝利。歴史的1勝を挙げた。「ミトノオルフェの馬主さん(ロイヤルパーク)は(かつて自身が所属していた)崎山厩舎の頃から20年来のお付き合いをさせていただいています。うれしい勝利になりました」と笑顔を見せる。

 前川師自身、崎山厩舎時代に担当したウエスタンダンサーで08年京阪杯V、翌年の高松宮記念(12着)に出走。あれから16年、調教助手から立場を変え、同舞台へ。元担当馬との経験は間違いなく今に生きている。「たくさん勝ってくれた思い出の馬。それでも思い通りにいかないことが多かったんです。今ならもっといろいろできるかな、という思いもあるし、タイムマシンがあれば戻りたい」。ホースマンとして経験を積めば積むほど馬に懸ける思いは強くなっている。

 複数の厩舎からスタッフが集い、船出を迎えたばかり。それまで別の厩舎で接点がなかったとしてもスタッフ同士が早くもなじみ、笑顔が絶えない。「よく声をかけるようにしています。みんなが楽しく、いい雰囲気で働いてもらいたいと思っています」とチームの和を大事にする。気負いは一切なし。トレーナー、スタッフ一丸となって大舞台に臨む。

 ◇前川 恭子(まえかわ・きょうこ)1977年(昭52)4月9日生まれ、千葉県富里市出身の47歳。筑波大卒業後、牧場で経験を積み、03年7月にJRA競馬学校厩務員課程入学。同10月から栗東・崎山厩舎で厩務員を経て調教助手。ウエスタンダンサーの担当スタッフを務め、08年京阪杯を制した。厩舎解散に伴って19年3月に坂口智厩舎へ。23年12月、調教師試験に合格し、JRA初の女性調教師となった。今月5日に厩舎を開業し、JRA通算13戦1勝。

 《担当スタッフも加入「頼もしい」》若手、中堅、ベテランのスタッフがそろう前川厩舎。モズメイメイとともに厩舎に加わった内徳厩務員は前所属の名門・音無厩舎でトシザミカやサンライズバッカス、サンアディユ、インディチャンプ、サンデーファンデーといった重賞馬に携わった経験豊富なスタッフだ。前川師は「モズメイメイはオープン馬で精神的に強く、すぐに厩舎に慣れてくれました。音無厩舎でも担当されていた内徳さんが自分の厩舎のスタッフとして引き続きやってくださっているのは頼もしいです」と全幅の信頼を置いている。