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2025.02.12

スポニチアネックス

宗像義忠師 22年ナランフレグで高松宮記念V!愛弟子・丸田と輝いた初戴冠「喜びは格別でした」

 ◇さらば伯楽(3)

2月いっぱいで定年を迎える宗像師 (撮影・村上大輔)

 今年は東西トレセンで8人の調教師(定年7人)が3月4日で引退する。ホースマン人生を振り返る連載「さらば伯楽」第3回は美浦の宗像義忠師(70)だ。93年開業後は重賞7勝のバランスオブゲーム、その弟のフェイムゲーム、愛弟子・丸田恭介(38)とのコンビで悲願のG1初制覇を果たしたナランフレグ(22年高松宮記念)など、記憶に残る個性派を育ててきた。

 宗像師の競馬との出合いは少年時代。父と一緒に通った福島競馬場だった。「馬の蹄が芝を叩く時のサウンド、音が心地良かった。騎手の顔が青白かったのもよく覚えています。今思うと、減量で大変だったのでしょう」。大好きになった馬を追求すべく、青森にある北里大学獣医学部へ。馬術部に入り、乗馬の基礎を磨いた。部費を稼ぐため、牧場でバイトもした。世は競馬ブーム。馬産が盛んだった青森には明成牧場など有力牧場もあった。「大学に行った当初は牧場で働くか、獣医師のイメージでしたけど」。

 馬術部のコーチが牧場関係者で、その縁で高橋英夫調教師を紹介され、競馬の道へ。80年に同厩舎で助手となった。ダイナカール(エアグルーヴの母)を育てた師匠は当時一般的ではなかったインターバルトレーニングを導入するなど、先駆的な名伯楽だった。今の宗像厩舎がある「美浦北E3棟」は高橋英厩舎をそのまま引き継いでいる。「師匠には馬の日々の接し方など、影響を受けました。40年以上も同じ場所でやってきて、ここを離れるのは不思議な気持ち。厩舎の後片付けも進めているんですけど、なかなか整理が追い付かない(笑い)。開業した頃の思い出の写真とかは岡部(幸雄)さんが結構多いんです」。高橋英厩舎の主戦だった岡部元騎手には93年開業時から、数多く依頼した。

 記憶にも残る個性あふれる活躍馬を育てた。「初めて重賞を勝ってくれたバランスオブゲーム(重賞7勝)ですよね。開業したばかりの厩舎を支えてくれました。新馬以外は全て重賞ばかり。体が丈夫で脚元もどこが痛いということがなかった。長い間本当に頑張ってくれました」。01年新潟の新馬V後、新潟2歳Sで厩舎の重賞初制覇を達成。7歳のオールカマー(1着)まで丸6年間、中距離重賞には必ず名前があって、6億円以上の賞金を積み重ねた。「中山が得意だったので、中山に(古馬中距離の)G1があったら勝てたかもしれません」。

 その弟フェイムゲームは長距離路線で躍動した。ダイヤモンドSを計3勝。15年天皇賞・春では勝ったゴールドシップに首差2着まで迫った。「お兄さんとタイプは違いましたけど、オーストラリアまで連れて行ってくれた」。弟は4億円超を稼ぎ、兄弟で厩舎を支える存在だった。

 愛弟子・丸田とのタッグで活躍したナランフレグも記憶に新しい。22年高松宮記念は、厩舎念願のG1初制覇だった。「やっぱり喜びは格別でした。丸田は競馬学校の時から朗らかで人柄も良くて、フリーになった今も調教を手伝ってくれてます」。他にも師の生まれ故郷の福島で重賞2勝のウインブレイズや北海道静内農高生産で注目されたユメロマンなど、記憶に残る馬を手がけてきた。

 縁を何より大切にして、地道に歩んできた46年間のホースマン人生も、間もなく幕が下りる。「厩舎の整理も終わってなくて、まだ振り返る感じではないですけどね。この世界にいると、いろんな場所に行けて(今開催の)小倉も行きましたけど、飛行機や電車の時間を気にして忙しいんです」。アウトドア派でゴルフや登山、旅行が趣味。「どこかゆっくり回りたいですね。山は体力のこともありますから、低山登山にしましょうか。競馬はこれからも応援していきたいと思います」。昔からずっと変わらない穏やかな口調で、第二の人生を見据えた。

 ◇宗像 義忠(むなかた・よしただ)1954年(昭29)7月26日生まれ、福島県出身の70歳。80年に美浦・高橋英夫厩舎の調教助手。92年に調教師試験合格、93年に開業。01年新潟2歳S(バランスオブゲーム)で重賞初制覇。22年高松宮記念(ナランフレグ)でG1初制覇。JRA通算8015戦671勝(重賞23勝)。

 《田中勝春厩舎に管理馬引き継ぎ》宗像厩舎の管理馬の多くは3月に新規開業する田中勝春厩舎に引き継がれる。田中勝師は騎手デビュー当初、高橋英夫厩舎の所属馬に多く騎乗した縁もあり、宗像師とも騎手別最多189勝(重賞10勝)を挙げた黄金コンビ。宗像師は「よく乗ってくれました。信頼できますし、馬のことを大事に考えてくれています。いい厩舎になると思います」と、入れ替わりで調教師人生をスタートさせる後輩にエールを送った。