2025.02.05

スポニチアネックス

落馬事故で死去…友道師「藤岡康太さん思いを胸に秘めて頑張った1年」

 日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は東京本社の出田竜祐(44)が担当する。1月27日に開かれた2024年度JRA賞授賞式に初潜入。翌日の紙面だけでは伝え切れなかった“競馬界のアカデミー賞”の舞台裏をお届けする。

年度代表馬に選ばれたドウデュース陣営。(左から)友道師、松島オーナー、武豊 (撮影・村上 大輔)

 競馬と聞いて思い浮かべるのはゴール前の白熱した攻防や馬券を握り締めるファンの姿だろう。その熱狂の裏で華やかな授賞式も開かれている。都内ホテルの宴会場。年度代表馬に選出されたドウデュースの関係者らがタキシードなどに身を包み登壇した。かつて取材した日本アカデミー賞授賞式に勝るとも劣らない景色だった。

 授賞式は2部構成で進行し、第1部は競走馬部門、第2部はホースマン部門の表彰が行われた。報道陣は控室のモニターでその様子を眺め、第1部と第2部の幕あいで会場へ“突入”。ドウデュース生産者・ノーザンファームの吉田勝己代表、特別賞フォーエバーヤングの藤田晋オーナーらが囲み取材に応じた。そこで吉田代表から新種牡馬ドウデュースがジェラルディーナ、スタニングローズと交配することが決定したというニュースが飛び出した。

 ドウデュースの主戦を務めた武豊は改めて愛馬への思いなどを語った。「強さもそうですけど思い出深い馬。50過ぎてこんなにワクワクさせてもらって、ホントいい馬に巡り合えたと思っています」。ラストランになるはずだった有馬記念は出走取消。引退式も中止となったが、そこで語られたであろうジョッキーの声を聞くことができた。

 オーナーのキーファーズ松島正昭代表とは、松島氏が馬主になる以前からの友人関係で「馬主を始めた時にいつか一緒にダービーを、と夢物語のようなことを言っていたら、本当になったのでうれしかったですね。競馬って夢があるなって改めて思いましたね」とも。ドウデュース初年度産駒がクラシックシーズンを迎えるのは29年。その年に還暦を迎える武豊は「本物の初老ジャパンになれるように頑張っていきたい」とユーモアたっぷりに締めくくった。

 また、ドウデュースを管理し、最多賞金獲得調教師に輝いた友道康夫師は「一番大切に思っていたジョッキー(藤岡康太さん)を亡くすというつらい出来事があったんですけども、彼の思いをスタッフも僕も胸に秘めて頑張った1年で、その結果がこの賞につながったと思います」と落馬事故でこの世を去った藤岡さんへ思いをはせた。

 馬が走り、人が夢を見る。授賞式では「1年後またこの舞台で表彰されるように」と誰もが口をそろえた。栄誉を手にした者、届かなかった者、それぞれの思いを胸に秘め、新しい1年が始まる。

 ◇出田 竜祐(いでた・りゅうすけ)1980年(昭55)9月29日生まれ、熊本県出身の44歳。明大卒。05年スポニチ入社。思い出に残る授賞式はブルーリボン賞(在京スポーツ紙7社で構成する東京映画記者会主催)。会場設営、台本作成など裏方として従事した。