2025.01.15
スポニチアネックス
未来のホースマン栗東トレセンで刺激
日々トレセンや競馬場など現場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」は栗東取材班の田村達人(32)が担当。中学3年の田中遥侑(よう)君は父の影響で馬の魅力を知った。未来のホースマンを目指し、努力を重ねている。
中学3年の田中遥侑君の夢は一流のホースマン。父に京都競馬場に連れて行ってもらったことがきっかけで競馬に興味を持ち、小学6年から大阪のクレイン学研枚方で乗馬を学び始めた。身長1メートル55、体重41キロの騎手体形。大方、自分の気持ちは固まっていたが、親が背中を押してくれたことで騎手を目指す決心がついた。田中君は「この恵まれている体を生かしたいと思いました。自分の将来のために、いろいろ尽くしてくれている親にはとても感謝しています」と伝える。
中学2年で大阪府から滋賀県に住まいを移した。現在は湖南馬事センター(甲賀市)で騎乗スキルを磨いている。乗馬を習い始めて丸4年。第33回近畿地区乗馬競技会(キャロットホースショー)は19年きさらぎ賞を制し、今は乗馬で活躍しているダノンチェイサーとのタッグで障害飛越80センチクラスを優勝した。「初めて乗った時から不思議と怖い気持ちはなくて、障害を飛ぶことが楽しかった。もっと上手になろう。その思いが日に日に強くなっています」と常に向上心を持って取り組んでいる。
だが、現実は甘くない。昨年、初めて受けたJRA競馬学校の騎手課程入学試験は不合格。落ち込んでいる時に声をかけてくれたのが落馬事故で昨年、騎手を引退した藤井勘一郎さんだった。藤井さんはオーストラリアや韓国など世界13カ国で経験を積み、6度目の挑戦でJRA騎手免許を取得した苦労人。偶然にも娘さんが田中君と同じ湖南馬事センターに通っており、その思いを聞いた藤井さんが交流のある清水久師に提案。昨秋には栗東トレセンを見学する機会が訪れた。
武豊ファンの田中君は清水久師から名馬キタサンブラックのジャンパーやグッズをもらい大興奮。「充実している施設に驚いてばかりです。(清水)先生が自分のことを息子のように親身になり、優しく話を聞いてくれたことが特にうれしかったです」と無邪気な笑顔を見せた。
今春からは高校生。大阪の学校に通うことが決まった。競馬は騎手だけではなく、調教師や厩舎スタッフなど裏方で支えるスペシャリストが多数いる。実際に厩舎作業を見学し、汗を流して働くスタッフを見て、刺激を受けた。「将来はJRAの調教師や獣医師などの仕事に就きたいです」。無限の可能性を秘めた少年が新たな目標に向かって、歩き出している。
◇田村 達人(たむら・たつと)1992年(平4)11月12日生まれ、大阪市城東区出身の32歳。高校卒業後、北海道新ひだか町のケイアイファームで働き、育成&生産に携わる。清水久師とは同じ中学校を卒業。