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2024.11.05

スポニチアネックス

【エリザベス女王杯】レガレイラ95点 ダービー時から一変 獲物を狙う“ドラゴンの瞳”

 ◇鈴木康弘氏「達眼」馬体診断

<エリザベス女王杯・馬体診断>レガレイラ

 女王の座を見据える竜の瞳だ。鈴木康弘元調教師(80)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第49回エリザベス女王杯では3歳馬レガレイラをトップ採点した。達眼が捉えたのはダービー5着の時とは一変した鋭利なまなざしと首差し。古馬勢を一蹴し、昨年のホープフルSに続くG1タイトルを丸のみする昇り竜の勢いだ。

 人生経験は目つきを変えるといいます。競走馬にもそのまま当てはまる格言です。目は心を映す鏡。厳しい経験によって培われた強い心は目にはっきりと表れる。たとえば、レガレイラ。今春とは別馬のような目つきに変わっています。

 「非の打ちどころがない体つきだが、一線級の牡馬と戦うには目が優し過ぎる」。ダービー時の馬体診断やNHKのパドック解説でこう指摘しました。画竜点睛(せい)を欠くとまでは言いませんが、睛(瞳)だけが物足りなかった。それから約半年。カメラマンに向けた目は獲物を狙うドラゴン(竜)のような睛に一変していました。相手を射すくめる竜の鋭いまなざしです。画竜点睛。竜の体にふさわしい睛が入ったのはなぜか。ダービーの激闘のような厳しい経験がタフな心を育み、それが鏡のように目に映し出されたのでしょう。

 目つきほどではないが、体つきも変化しています。キ甲(首と背中の間の膨らみ)が抜けてきたことで首の付け根がたくましくなった。トモの推進力を十全に前肢へ伝えられる力強い首差しです。

 この季節の牝馬をチェックする時、着眼点が2つあります。1つ目は腹周り。数週前まで続いた残暑のせいで疲れが残っていれば牝馬の腹は巻き上がります。2つ目は毛ヅヤ。気温の低下に敏感な牝馬の多くは今の季節になると冬毛を伸ばし始めます。そのため毛ヅヤが失われてしまう。エリザベス女王杯の有力候補にも腹が細くなったり、冬毛でくすんだ馬が散見できます。だが、レガレイラの腹周りはとてもふっくらしている。鹿毛の被毛には冬毛も交じらず、赤褐色の光沢を放っています。狂いのない四肢。その健康そうな脚の先も蹄油で光っています。体調も良ければ、手入れも行き届いています。

 唯一、気になるのは尾です。ダービー同様、牡馬のような太い尾に力が入っている。カメラを向けられても気負わず、穏やかに尾を流せれば本物。一時代を築く名牝になるかもしれません。

 顔を見ると、オデコが小さなコブみたいに少し突き出しています。MLBワールドシリーズを制したドジャース・大谷翔平の愛犬にあやかって「デコピン」と呼びたくなる、かわいいオデコ。そのすぐ下には竜の瞳が女王の座を見据えています。(NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の80歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。