2024.10.28

スポニチアネックス

【天皇賞・秋】鈴木康弘氏 ためれば切れる!!“名刀”ドウデュース

 【鈴木康弘 達眼解説】一時代を築く名馬には2通りのタイプがあります。どんな競馬をしても力を発揮するオールマイティーな名馬。自分の競馬をした時だけすさまじいパワーを発揮するスペシャリティーな名馬。ドウデュースは明らかに後者です。勝ち気にはやって位置を取りに行ったり、途中で動いてしまうと竹みつのようにまるで切れないが、道中動かず脚をためれば名刀の切れ味を発揮する。武豊騎手はそんな特徴を知り抜いているから道中後方に構えて微動だにしなかった。

<東京11R 天皇賞・秋>ウイニングランでファンに手を振るドウデュースの武豊(撮影・村上 大輔)

 前半1000メートル59秒9。先行勢に有利な緩いペースになっても知らぬ顔の半兵衛を決め込みました。武豊騎手の言葉を借りれば「腹をくくって」4角でもブービー14番手。だが、抜刀した瞬間に相手を倒す居合さながら、直線でGOサインを出すや、並ぶ間もなく差し切った。ラスト3F32秒5。身震いする名刀の切れ味です。

 直線、武豊騎手は先行勢の脚色に余裕があるのを承知の上で迷わず外へ進路を向けた。よほど末脚に自信を持っていたのでしょう。動けば竹みつ、ためれば名刀。スペシャリティーな名馬をつくったのはドウデュースに寄せる鞍上の信頼感です。

 ジャパンC、有馬記念とラストシーズンの戦いは続きます。胴が詰まって見えるほど前後肢の筋肉が盛り上がったマイラー体形。こういう岩のような筋肉は瞬発力を生み出す半面、長距離を走るには邪魔になる。天皇賞・秋からの距離延長はプラスになりません。それでも、腹をくくって後ろで脚をためる競馬に徹すれば…。名刀が引退の花道も切り開くでしょう。(NHK解説者)