2025.04.18
スポニチアネックス
【皐月賞】作戦よりも馬の気持ち信じて接戦制した田中勝 07年ヴィクトリー
【競馬人生劇場・平松さとし】今週末、中山競馬場で皐月賞が行われる。07年、このクラシック競走を制したのがヴィクトリー(栗東・音無秀孝厩舎)だった。手綱を取ったのは、現調教師の田中勝春騎手。早め先頭から粘り込み、最後はサンツェッペリンとの激しい競り合いを鼻差しのいだ。

「若いジョッキー(サンツェッペリンに騎乗していた松岡正海騎手)に負けるわけにはいかないと必死に追いました」
ちなみに、その4年前、03年の皐月賞ではサクラプレジデントに騎乗し、ネオユニヴァースに頭差で敗れていた。ゴール直後、勝利を収めたM・デムーロ騎手が田中勝騎手の頭をポカリと叩いたあの一戦だ。
「あんな悔しい思いは、二度としたくない」という思いが、あの勝利の原動力になったのだが、このレースには、もうひとつ忘れがたい逸話があった。
「調教師からは“逃げないで”って言われていたんだけど、無理に抑えて馬とケンカするよりは、行かせた方がいいと判断して、途中から馬の気持ちに任せました」
机上の作戦よりも、現場で感じ取った空気を信じ、馬と心を通わせる選択をした結果が、鼻差の勝利を呼び寄せたのだった。
さて、現在は管理する側になった田中勝春調教師は先週13日、福島競馬場のメイン・福島民報杯をシリウスコルトで勝利。開業からの初勝利を、リステッドレースで飾ってみせた。
この馬は、親交の深かった宗像義忠元調教師の管理馬でもあり、その個性を理解していたことも、勝因の一つだった。
「福島みたいな小回りコースで、一瞬の脚が生きるタイプだと思いました。ただ、左右どちらの回りも問題ないので、次は新潟大賞典を目指しますけど…」
その後、本音をこぼした。
「同期で開業した調教師が次々と勝ち上がっていたけど、自分は自分の馬をしっかり仕上げることに重点を置きました」
現在はわずか12馬房。13戦目での初勝利は、新人調教師としては遅くない。
新たな夢の扉は開かれたばかり。いずれクラシックも勝てるような活躍ができることを期待したい。 (フリーライター)