2025.04.02
スポニチアネックス
【ドバイターフ】池江泰郎氏特別手記 長男・泰寿師へエール「ソウルラッシュは十分チャンスある」
日本馬25頭が遠征するドバイワールドカップデー(5日、メイダン)は豪華レースがめじろ押し。本紙評論家・池江泰郎氏(84)が、とりわけ熱視線を送るのが「ドバイターフ」。長男・泰寿師(56)が昨年のマイルCS覇者ソウルラッシュ(牡7)を送り込む。JRA・G1現役最多の23勝を挙げる名トレーナーだが意外にも海外G1は未勝利。ドバイで悲願のVを狙う。池江氏自身は調教師時代、01年に当時7歳だったステイゴールドでドバイシーマクラシック制覇。UAEにおける日本馬の初勝利だった。特別手記を寄せてエールを送った。

ステイゴールドのドバイシーマクラシックはもう24年前。(社台レースホースの)クラブ馬で応援が多く、勝てて大騒ぎだったことを覚えています。当時は管理馬の初めての海外遠征で怖いもの知らずでした。先に抜け出したファンタスティックライトにジリジリと迫って2着かなと思ったんですが、みんなが勝っていると言ってくれて。写真判定で見ると鼻面が出ていました。
勝てなかった時期が長く、重賞でも2、3着が続いて悔しい思いをしていました。前年の目黒記念で2年8カ月ぶりの勝利。7歳だった01年にドバイと香港で海外重賞を勝てました。ムラがある馬でしたが、年齢を重ねて常識にかかってきました。勝負強かったですし、能力も凄いものがありました。
トゥザヴィクトリーのドバイワールドCもこの勢いで勝つんじゃないか、と期待していました。ハナを切って4角を回った時はよし!と思いました。直線でかわされて2着でしたけど、よく頑張ってくれました。牝馬とは思えないくらい骨格がしっかりしていましたね。初ダートだったフェブラリーS(3着)を好走したことでドバイに連れていくことになりましたが、本当に素晴らしい馬。G1を勝たせないといけない、とずっと思っていました。
当時のドバイ遠征は今みたいに直行ではなく、台北と香港で2回乗り継ぎがありました。ステイゴールドは輸送でグタっとしていてカイ食いも細かったです。現地でも日本馬は当初、後半の暑い時間帯での調教でした。さすがにこれでは参ってしまう。調教役だった泰寿(現調教師)は海外で研修していた経験があり、言葉がいくらか通じるので交渉すると、一番乗りの時間帯は空いているということで変更してもらいました。深夜3時ぐらいに調教できたことは大きく、少しずつ回復していきました。
日本馬は当時、米国や欧州の強豪相手にどれくらいやれるかといった感じでしたけど、時代は変わって本当に強くなりましたね。日本でドバイのレースの馬券を買えるようになり、世界の競馬が身近な存在になりました。当日は私も日本で夜中に目をこすりながら応援するつもりです。
やっぱり気になるのは泰寿が管理するソウルラッシュ。ドバイターフでも十分チャンスがあるとみています。昨年のマイルCSの勝ちっぷりは見事でした。続く香港マイル(2着)でも、しまいはよく伸びていました。今年7歳でも衰えは感じさせず、ステイゴールドのように年齢とともにしっかりしてきましたね。ドバイでも力をしっかり出せるでしょう。厩舎の海外G1初制覇を期待したいです。
香港馬ロマンチックウォリアーが一番の強敵です。昨年の香港カップを現地で観戦して名馬中の名馬だと感じました。昨年の安田記念でもソウルラッシュなどの日本馬に完勝していますし、サウジCも負けて強しのレースでした。この馬もまだまだ強い7歳馬です。せっかくの晴れ舞台ですし、出走馬がトラブルなくゲートインしてくれることを願っています。(本紙評論家)
◇池江 泰郎(いけえ・やすお)1941年(昭16)3月1日生まれ、宮崎県都城市出身の84歳。騎手時代は「逃げの池江」の異名を取り、通算3275戦368勝。引退後は調教師になって79年に開業、通算6768戦845勝。ディープインパクト、メジロデュレン、メジロマックイーンなどG1馬を多数、手がけた。海外G1はステイゴールドで01年香港ヴァーズV。11年に調教師を引退。長男・泰寿は現役調教師。