2025.01.31

田中博康調教師

今週末、東京競馬場ではダートの重賞、根岸S(GⅠ)が行われる。23、24年度のJRA賞最優秀ダートホースに選定されたレモンポップが、2年前に制したのがこのレースだった。
 後にチャンピオンズC(GⅠ)連覇等、JRA、地方交流でGⅠ、JpnⅠを勝ちまくった同馬だが、初めての重賞制覇がこの時の根岸S。そして、管理する田中博康調教師にとってもこれが初めての重賞制覇だった。
 1985年12月生まれの同調教師。2006年に美浦・高橋祥泰調教師(引退)の下、騎手デビューをすると、09年にはクィーンスプマンテでエリザベス女王杯(GⅠ)を逃げ切り。GⅠ初制覇を果たした。
 しかし、ジョッキーとしては決して大成功を収めたというわけではなく、JRA通算129勝で鞭を置き、18年に調教師へ転身した。
 つまり冒頭で記した根岸Sでの重賞初制覇は開業5年目での出来事。必ずしも遅い記録だったわけではないが、当人は当時「やっとです」と言い、胸を撫で下ろしていた。
 その理由の1つとしては、同期の調教師が皆、活躍していた事があげられる。17年に発表された調教師試験合格者は高柳大輔調教師、武幸四郎調教師、武英智調教師、林徹調教師、安田翔伍調教師、和田勇介調教師、そして田中博康調教師の計7人。田中博康調教師が23年に根岸Sで初重賞制覇を飾った際、残りの6人の調教師は1人残らず全員が既に重賞勝ちをマークしていたのだ。
 「自分だけ勝てないでいたので、正直、プレッシャーは半端ではなかったです」
 2年前、重賞初勝利をマークした日の夜、彼は訥々とそう語った。
 しかし、それから僅か2年で田中博康厩舎はブレイクしてみせた。先述のレモンポップの他にも重賞を勝ちまくり、ついに昨年はJRA賞最高勝率調教師と最優秀技術調教師の2部門でトップ。27日に行われたJRA賞授賞式の調教師部門で表彰されるまでになった。
 同調教師の下には現在2勝クラスのルージュアベリアやまだ新馬を1度走ったばかりのレッドイストワール、そしてこの東京開催でデビューを予定しているレッドエウロスらがいる。将来の伯楽候補の下、彼等が活躍する事を願いたい。
(撮影・文=平松さとし)

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