2025.01.21
ディープインパクトの若駒S
今週末、中山競馬場ではアメリカジョッキークラブC(GⅡ)が、中京競馬場ではプロキオンS(GⅡ)が、そして小倉競馬場では小倉牝馬S(GⅢ)が行われる。
すっかりこの時期の重賞として定着した感のあるアメリカジョッキークラブC、夏から移動してきたプロキオンS、そして今回が第1回となる小倉牝馬Sと、それぞれどんな結果が待っているのか楽しみだが、もう1つ、気になるレースがある。重賞ではないが、毎年この時期に行われる3歳のオープン競走、若駒Sだ。
芝2000メートルで行われるこのレースはクラシックを占う意味でも無視出来ない1戦で、たびたび後の重賞でも勝ち負け出来る馬が出て来る。
2005年の勝ち馬もそう。
ディープインパクトである。
前の年の04年12月にデビューした同馬。その新馬戦の勝ちっぷりが衝撃的で、私は年明けに発売された某競馬週刊誌の誌上における武豊騎手インタビューで早速、次のような質問をしている。
―― 新馬を勝ったばかりですが、ディープインパクトという馬は、今年(05年)のクラシック戦線で楽しみなのでは?
そう問うと、武豊騎手は「無事なら相当やれると思います」と答えていた。
そんなディープインパクトの新馬戦に続くデビュー2戦目となったのが05年1月22日に行われた若駒Sだった。
このレースで同馬は新馬戦を上回る更に衝撃的な走りを披露する。序盤は7頭立ての最後方から進むと、3コーナーでも先頭との差はまだ20馬身前後。4コーナーへかけて少しずつ差は詰めたものの、それでもブービーの位置取りで最終コーナーをカーブした。
直線に向いた時もまだ先頭とは10馬身近い差があったが、そこからの脚がケタ違いだった。武豊騎手にいざなわれ大外へ持ち出されたディープインパクトは、ほとんど追われる事なく持ったままにもかかわらず、一気に前との差を詰める。伸びて来たと思った次の瞬間には先頭に並び、かわす。かわしたと思った次の刹那、2番手との差は5馬身と広がり、余裕のゴールイン。前年の兄ブラックタイドに続く兄弟での若駒S制覇をマークした。
皆さんご存じの通り、結局、ディープインパクトは無敗のままこの年の3冠を制すと、古馬になった翌06年、天皇賞・春(GⅠ)と宝塚記念(GⅠ)も快勝。11戦10勝、GⅠ5勝という成績を引っ提げて凱旋門賞(GⅠ)に挑んだ。
私も当時、フランスへ行ったが、この頃は現在ほどインターネット環境が整備されていない時代。フランスの関係者やマスコミの記者らの中には「ディープインパクトの成績は知っているが、レースを見た事はない」という人もいた。ある日のシャンティイ競馬場の記者席で、そんな連中に「日本での競馬ぶりを見せてほしい」と請われた私が、ネットに繋いで真っ先に見せたのが、この若駒Sだった。日本ダービー(GⅠ)でも天皇賞でもなく、若駒Sを披露したところ、遠くフランスの競馬場の記者席で「おぉ~!」という歓声が上がった事を今でもよく覚えている。
(撮影・文=平松さとし)
※無料コンテンツにつきクラブには拘らない記事となっております。