2025.01.17

レッドテリオスとマーカンド騎手

1月12日、中山競馬場の第7レース。芝2200メートルで行われた4歳以上1勝クラスのこのレースを勝利したのはレッドテリオス(牡4歳、美浦・古賀慎明厩舎)。手綱を取ったのは短期免許で来日中のトム・マーカンド騎手だった。
 1998年3月生まれだから現在26歳。イギリスのニューベリーで生まれ、幼い頃からポニーに乗っていたという。
 デビューは2014年11月。12月に初勝利を挙げると翌15年は67勝と飛躍。その後も順調に勝ち鞍を伸ばし、18年には自身初の大台となる105勝。ビッグレースの制覇もそれに比して増え、20年にオーストラリアでランヴェットS(GⅠ)やクイーンエリザベスS(GⅠ)を制したアデイブとのタッグでは翌21年もクイーンエリザベスSを連覇。他にもガリレオクレームでのセントレジャー(GⅠ)やアレンカーでのタタソールズゴールドC(GⅠ)、シーラローザとのロワイヤリュー賞(GⅠ)等、枚挙にいとまがない。また、昨年はJRAでも馬券発売をされたアイリッシュチャンピオンS(GⅠ)をエクノミクスで制す等、夫人のホリー・ドイル騎手と共にヨーロッパでは押しも押されもせぬトップジョッキーとなっている。
 話をレッドテリオスに戻そう。スタートは普通に出たが、18頭立ての内より4番枠がかえって良くなかったか、外から次々と被されるようになり、最初のコーナーに差し掛かる頃には後方に。元々前へ行くタイプではないが、それにしてもいつもより後ろの位置取りになった。
 そのまま馬順に大きな変わりがないまま3コーナーを過ぎ、4コーナー手前でも前にズラリと他馬が並ぶ光景を見た時には、正直万事休すかと思えた。これは見守っていた古賀調教師も同様の心境だったようで、レース後には次のように語っている。
 「3コーナーあたりでは無理かな?!と感じました」
 ところがそこからがさすが競馬発祥の地のトップジョッキーの手綱捌き。4コーナーから直線へ向かう際に追い上げた勢いを殺す事なく外へ持ち出し、最後のホームストレッチで追うと鞍下が反応。豪快に伸びて先行勢をまとめて差し切り。結局2着馬に4分の3馬身差だが、その着差以上の脚色の差で完勝してみせた。
 今回の勝因はこの鞍上の好判断だけではなかった。古賀調教師は言う。
 「いつもはチークピーシーズをゲート裏で着けるのですが、前走はパドックで着けました」
 すると、馬場に入る頃には充分過ぎるくらい気合いが乗ったという。
 「いかにも目が覚めた感じでした。だから今回はチーク以上に効き目の見られそうなブリンカーを装着しました」
 繊細な馬なので調教でも試した上で、実戦でも使用。そんな効果もあっての末脚炸裂だった。指揮官は続ける。
 「シチュエーションによって持っている能力のひきだしが沢山あるようです。そういう意味では今後の上のクラスでも楽しみです」
 とりあえずこれから先に関しては未定との事だが、楽しみなのは間違いない。今後の動向に注目しよう。
(撮影・文=平松さとし)