2025.01.09
レッドデイヴィスのシンザン記念
レジェンド・武豊騎手を背に、2011年の有馬記念(GⅠ)に挑んだのがレッドデイヴィス(栗東・音無秀孝厩舎)だ。
結果は9着に敗れたが、勝ったオルフェーヴルとは僅か0秒5の差。出走13頭の大外13番枠でなければ、もう少し上位進出もあったのでは?と思えるほど善戦してみせた。
当時、管理する音無調教師は次のように語っていた。
「若い時から気性面で難しいところがあって持っている力を出し切れない事があるけど、ポテンシャルに関しては相当高い馬ですよ」
同馬がデビューしたのは前年である10年の9月。阪神競馬場、芝1800メートルで行われた2歳新馬戦。結果は2着に敗れるのだが、このデビュー戦で既に去勢されていた事からも、気性的に難しいタイプだった事が察せられる。
また、同時にポテンシャルの高さを窺わす一面もあった。冒頭で記したグランプリに出走したのは3歳時なのだが、この時点で既に重賞を3つも優勝していた。いずれも3歳だった11年の話で、1月にシンザン記念(GⅢ)を勝つと3月には毎日杯(GⅢ)。そして有馬記念の直前の12月初旬には鳴尾記念(GⅢ)をも勝っていたのだ。
中でも特筆すべきだったのは、シンザン記念での勝利。直前に走った自己条件のレースでは最後の直線で外へ斜行。他馬の進路を妨害したとして、1位入線しながらも10着に降着していた。その鬱憤を晴らすようにシンザン記念を制したわけだが、この時の2着馬がオルフェーヴルで、3着はマルセリーナ。前者は言わずと知れたこの年の3冠馬で、後に2年連続で凱旋門賞(GI)を2着するほどの名馬。後者も約3カ月後には桜花賞(GI)を勝つほどの快速馬だった。
これらに先んじてゴールラインを通過したのだから、音無調教師が言うように「ポテンシャルに関しては相当高い馬」だったのだろう。
レッドデイヴィスは結局25戦5勝の成績でGIを勝つ事なく、ターフを去っている。しかし、7歳でラストランとなった宝塚記念(GI)でも勝ったラブリーデイから2馬身半ほどしか離されず、時計にして僅か0秒4差に善戦してみせた。使い古された陳腐な言い回しで申し訳ないが、記録よりも記憶に残る1頭だったのは間違いないだろう。
さて、今週末は月曜日までの3日間開催。最終日の中京競馬場ではシンザン記念が行われる。登録のある東京ホースレーシングのルージュミレネール(美浦・斉藤誠厩舎)は前日の中山競馬場のメインレースであるフェアリーS(GⅢ)に回るようだが、除外となればシンザン記念に再投票される可能性もあるそうだ。抽せんの結果も含め、果たして今年はどんなドラマが待っているだろう。注目したい。
(撮影・文=平松さとし)