2024.12.20
有馬記念馬キタサンブラック
今週末は有馬記念(GⅠ)が行われる。
2017年にこのグランプリを勝ったのがキタサンブラック。同馬はGⅠを7勝もしたが、そのうちこの有馬記念を含む6つのGⅠを武豊騎手とのタッグで制している。ご存知のようにオーナーは歌手の北島三郎氏。当時、インタビューさせていただくと、次のように語っていた。
「最初のGⅠを勝ってくれた北村宏司さんにも感謝していますが、武さんには数々の喜びを届けてくださり、感謝しかありません」
ちなみにその最初のGⅠ勝ちは15年の菊花賞(GⅠ)。これがキタサンブラックばかりか北島オーナーにとっても初のGⅠ制覇だったのだが、北島氏が馬を持ち始めたのは1963年。つまり、半世紀以上の時を経ての、悲願のGⅠ制覇だったわけだ。
北島オーナーがキタサンブラックと初めて出合ったのは生産牧場のヤナガワ牧場での事だった。第一印象は「目の綺麗な馬」だったそうだ。
しかし、すぐにキタサンブラックを手に入れたわけではなかった。1度は車に戻り、牧場を後にした。
「でも、あの黒くてクリッとした綺麗な目を忘れる事が出来ませんでした」
当時、北島オーナーはそう述懐していた。そして、続けた。
「結局、車の中から牧場に電話を入れて『さっきの目の綺麗な馬を買わせてください』と話していました」
こうして北島オーナーに買われた黒くて綺麗な目の馬はキタサンブラックと名付けられ、栗東の清水久詞厩舎に預けられる。そして、後藤浩輝(故人)が乗って新馬戦を快勝すると、その後は先述した通り北村宏司騎手を背に菊花賞を優勝。北村宏騎手の怪我を期に天才・武豊騎手が乗るようになると、キタサンブラック自身の本格化と合わせて無双状態となる。春秋の天皇賞(いずれもGⅠ)やジャパンC(GⅠ)を制覇。ラストランとなった有馬記念(GⅠ)で見事に有終の美を飾ってみせたのだった。
もし北島オーナーが黒い目を気に入っていなければ……。もしわざわざ電話を入れていなければ……。ほんの少しの事で日本の競馬の歴史は大きく変わっていた事だろう。
(撮影・文=平松さとし)
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