2024.12.05

レッドファルクスの香港スプリント挑戦

日本では2歳牝馬のGⅠである阪神ジュベナイルフィリーズが行われる今週末、香港では4つの国際レースが行われる。すなわち1200メートルの香港スプリント(GⅠ)、1600メートルの香港マイル(GⅠ)、2000メートルの香港カップ(GⅠ)に2400メートルの香港ヴァーズ(GⅠ)だ。
 日本からは飛行機で約4時間と、海外にしては近い事に加え、各カテゴリー分けされたレースが4つもある事で、毎年、かの地へ飛ぶ日本馬は多い。数の原理ではないが、当然、好結果を残す日本馬も多いのが、この香港国際レースデーである。
 とはいえ好結果を残すレースには多少偏りがあるのも事実だ。ウインブライトやエイシンヒカリ等、日本でGⅠ未勝利の馬でも優勝した香港カップや、例年ヨーロッパ勢との争いになる香港ヴァーズ等は、それなりに勝ち馬を出している。また、香港マイルは近年ゴールデンシックスティという地元の最強マイラーがいたため苦戦を強いられたが、それ以前にはアドマイヤマーズやモーリスらが勝利。決して崩せない壁ではなかった。
 ところがそれらと一転して、高く厚い壁が存在するのが、香港スプリントだ。世界一強いとも言われる香港の短距離戦には、数多くの日本のチャンピオンスプリンターが挑んでは弾き返されてきた歴史がある。2012~13年と連覇を果たしたロードカナロアは例外中の例外なのだ。
 16年にこの香港の砦に挑んだレッドファルクスも同様だった。尾関知人調教師の管理馬で、同年のスプリンターズS(GⅠ)を制しGⅠホースとなったこの芦毛馬は、勇躍香港へ飛んだ。前年にはサクラゴスペルをかの地に送り込んでいた尾関調教師は「人間(スタッフ)の方が大分慣れていたのは良かったです」と戦前に語った。
 しかし、ゲートで少し待たされたのが影響したか、立ち遅れると、最後までこの馬の持ち味を出せずじまい。13頭立てのブービー12着と大敗を喫してしまった。
 「状態は悪くないと思ったのですが、スタートを決められず、いつもの伸びを発揮出来ませんでした。残念です」
 指揮官は悔しそうにそう語った。
 さて、今週末の香港には9頭の日本馬が出走を予定している。スプリントにもスプリンターズS(GⅠ)の1、2着馬であるルガルとトウシンマカオら3頭がエントリーしているが、今年は地元に久々に怪物級のスプリンター・カーインライジングがいて、楽な戦いにはなりそうにない。もっとも、釣り糸を垂らさない事には大魚がかからないのは事実。香港スプリントでは苦戦したレッドファルクスも、帰国後の翌年にはスプリンターズS連覇を決めてみせた。今年の香港でも良い挑戦が見られる事を期待したい。
(撮影・文=平松さとし)