2024.11.07

レッドジェノヴァと小島茂之調教師

今週末、京都競馬場ではエリザベス女王杯(GⅠ)が行われる。様々なドラマを生んできたこの3歳以上牝馬のGⅠレースだが、最も波乱といえたのは2009年。クィーンスプマンテが逃げ切り、2着も2番手を追走したテイエムプリキュア。いわゆる“行った行った”の決着で、この1、2着馬はそれぞれ単勝が11、12番人気。単勝オッズ1.6倍の圧倒的1番人気に推されたブエナビスタは最後の最後で追い上げて来たが、3着まで。3連単は実に154万5760円もついた。
 このクィーンスプマンテを管理していたのは美浦・小島茂之調教師だが、彼はそれから9年後の18年にも管理馬をエリザベス女王杯に送り込んでいる。
 「クィーンスプマンテの時よりもチャンスがあると思って臨みました」
 そう語るのがレッドジェノヴァだった。
 「最初から体質的な弱さのある馬で、入厩も遅かったし、あまりしっかりと攻められないまま競馬に使わざるをえないようなタイプでした」
 小島師はそう述懐する。
 2歳の11月も終わろうかという頃にやっとデビュー出来たが、新馬戦は3着に敗れた。1年後、3歳の11月に挙げた勝ち星がやっと2つ目。フィジカル面の弱さがあったから「早急に結果を求めず、大事に大事に育てた」(小島師)。
 その結果、4歳になって開花した。春に勝利すると夏の札幌では2連勝。4戦3勝で一気にオープン入りを果たした。
 「とにかくやり過ぎるわけにはいかないという馬だったので、北海道でも基本的には自分が乗り、最終追い切りだけ調教助手に乗ってもらっていました」
 小島師がそう言う。
 オープン入りを決めたレースはワールドオールスタージョッキーズの第2戦でC・ルメール騎手が当たってのモノだった。
 「ルメールさんも『イージー(楽勝)』という感じで、何も注文をつけられませんでした」
 続く京都大賞典(GⅡ)ではジャパンC(GⅠ)勝ち馬のシュヴァルグランらに先着し、菊花賞(GⅠ)と有馬記念(GⅠ)勝ちのあるサトノダイヤモンドから僅か半馬身遅れの2着。こうしてエリザベス女王杯に駒を進めた。
 「結局、女王杯はリスグラシューの4着に負けちゃったけど、レース後、リスグラシューの厩務員さんから『小島先生に負けると思っていました』と言っていただいたのをよく覚えています」
 この成績から、弱かった体質を強化し本格化したのかと思いきや、小島師は次のように言う。
 「体質面は最後まで強くなりませんでした。しっかりやれていれば、サトノダイヤモンドに勝っていたかもしれません。結局、重賞を勝たせてあげられなかったのは心残りです」
 繁殖に上がったレッドジェノヴァの仔には現在2歳のルージュラティーナ(栗東・池江泰寿厩舎)らがいる。同馬の父は京都大賞典でお母さんを破ったサトノダイヤモンド。小島師が「大事に育てた」からこそ紡がれる物語の続きに期待したい。
(撮影・文=平松さとし)