2024.08.07

新潟の暑熱対策

7月27、28日に続き8月3、4日と、JRAでは新潟開催の競走時間帯の拡大を行なった。通常約1時間の昼休みを約3時間半に延長。気温が上昇する日中にレースを行わない、いわゆる暑熱対策の一環として実施したわけだ。
 当初、この案を耳にした時は、朝からの来場者が減るのではないか?と、率直に思った。新潟競馬場が立地的にとくに周囲に時間を潰せるアミューズメント等があるわけではないので、朝から来ていてはヒマを持て余すと思えたのだ。
 となると、午後からの来場者が増えるか?というと、メインレースをすぐに行うため、それもどうか?と考えられた。
 つまり、来場者は減ってしまうのではないか?と思えたのだ。
 ところが蓋を開けてみると全くそんな事はなかった。JRAの発表によると4日間、合計の入場者数は5万6191人で対前年比123.5パーセント。売り上げも573億2056万2300円で同122.2パーセント。どちらも大幅増を記録した。
 私も実際、2週にわたり新潟へ足を運び、その賑わいぶりを実感した。開門から多くのお客さんが並んでいたし、最終レースでもまだ沢山のファンが残ってレースを観戦していた。
 長い昼休みといってもその間、札幌競馬は通常通り行われていたので、場外感覚でそちらを購入するファンも多かったのだろう。そして、そういったファンは、札幌の全レースが終わった後は残りの新潟のレースにも当然、触手を伸ばした事だろう。それが売り上げを伸ばした要因になったのかもしれない。
 また、長い昼休み時間にトークショーやパドックを一般開放するといったイベントを設けたり、無料でアイスバーを配ったりといったJRAの努力の効果も来場者を減らさず、むしろ増やす事に成功した1つの要因だろう。
 一方で、土曜日に新潟、日曜には札幌で騎乗したC・ルメール騎手が新潟の後半の数レースの騎乗予定を組めなかったり、同様のケースで騎乗した松山弘平騎手が日曜の早い時間帯のレースに間に合わなかったり(本人の航空券の購入手続きの錯誤があったという事だが、開催時間帯や長岡の花火大会の影響か飛行機に空席がほとんど無かったという点を考慮すると、不運な感は否めない)、といった現場レベルでのドタバタ劇があったのも事実。また、競馬場で働く人達の中からは「帰宅時間が遅くなる」といった声もなかったわけではない。ジョッキー達に何をするのか聞いたところ「昼寝します」とか「もう一度、ウォーミングアップをし直さないといけないので、思ったより大変でした」と言った声もたしかにあった。
 しかし、そんなジョッキー達や調教師も、おしなべて次のように語っていた。
 「実際に日中と夕方では随分、気温が違いますからね。馬のためには良い事だと思うので、従うだけです」
 来場者増につながった根幹にあるのは、ほとんどのファンが「馬のため」の対策である事を納得してくれているからなのだろう。最終レースが終わり、競馬場を出る頃には大分暗くなっていた空を見上げ、そんな事を思った。
(撮影・文=平松さとし)

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