2024.07.30

笹川騎手JRA初勝利

7月28日、新潟競馬場の第12レースをヒューゴ(美浦・加藤征弘厩舎)が勝利。騎乗したのは大井の笹川翼騎手だった。
 最初に彼と言葉を交わしたのは2016年のこと。共通の知人を介し、都内で会った。
この時の目的は、彼が「外国で乗ってみたいので、現地の関係者を紹介してほしい」というもの。当時デビュー4年目だったが、将来を見据え、視野を広めたいとの事だった。
 結果、フランスの関係者を紹介し、一緒に海を越えた。若いながらも信念を持って行動する姿勢に感心したものだ。
 また、今春にも海外で顔を合わせる機会があった。今度の国はカタールだった。
 「とくに伝手はなかったけど、とりあえず短期免許だけを申請して、来てみました」
 中東の空の下、そう語った。調教時間すらよく分からないまま、早起きして厩舎を回り、自ら繋がりを構築。結果、レースに騎乗させてもらえるまでになった。昨年のリーディングジョッキーである。日本でジッとしていれば当然それなりの馬は集まる。しかし、乗れるかどうかも分からないというリスクを冒しても、国境を越えた。そういう姿勢に競馬の神様がくれたご褒美で、レースの騎乗を掴み取ったのだ。
 そんな笹川騎手が、7月16日には地方通算2000勝を達成。初騎乗から4119日目の偉業達成は戸崎圭太騎手の同5086日を大きく更新するスピード記録だった。
 そして、JRAに参戦したのが冒頭で記した7月28日の事。この日、計8レースに騎乗した彼は最後のレースで見事に1着。地方であれだけ勝っている事を考えると、意外にもこれがJRAでの初勝利となった。
 「沢山、乗せていただいた中でやっと結果を出せました。ありがたいし、嬉しいです」
 地方の大先輩である内田博幸騎手が「JRA初勝利」のプラカードを持ち、同じく大井の先輩である戸崎圭太騎手から記念品をプレゼントされ、祝福された笹川騎手は白い歯をこぼしてそう言った。国境も、地方とJRAの壁をも越えた彼の今後ますますの活躍を期待したい。

(撮影・文=平松さとし)

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