2024.07.12

レッドラディエンスの重賞勝ち

7月7日、福島競馬場で行われた七夕賞(GⅢ)を東京サラブレッドクラブのレッドラディエンスが優勝した。
2021年夏、美浦・藤沢和雄厩舎からデビューした同馬。藤沢厩舎の解散もあり、栗東・友道康夫調教師の下へと転厩した。
「サンデーサイレンスの系統にしては馬格があって良い馬だと感じました」
転厩当初の印象を、友道調教師はそう語る。
「ただ、夏の暑い時期に転厩してきたせいか、最初のうちはテンションが高くて、調教もかなり気を使いました」
具体的には「馬場入り時等にかなり気をつけた」(友道調教師)そうだ。
レースでは常に勝ち負けを争ったが、惜敗も多かった。これについて指揮官は次のように評した。
「転厩前の走りをチェックすると、追い出してモタモタする感じがありました。うちに来てからも最初はそんな感じだったので、取りこぼす事もありました。これも精神的な面が影響していたのかもしれません」
そうこうするうち骨折での休養もあり、今年、5歳となった。すると……。
「年齢的なモノもあってか、大分落ち着きが出てきました。少しモタつく事は相変わらずあるけど、それも以前に比べればだいぶ成長が窺えます。そして、それに伴ってここへ来て、本当に順調に使えるようになりました」
今年2月のコパノリッキーCで戦列に復帰すると、いきなり快勝。続くメトロポリタンS(準重賞)は2着に敗れたが、悲観はしなかった。
「勝った馬の流れに持ち込まれてしまって負けたけど、内容的には強い競馬をしてくれたと思いました」
これには手綱を取った戸崎圭太騎手も首肯して、言った。
「本当に競馬が上手なので、追い出しのタイミングだけでした。力負けとは思っていません」
こうして迎えたのが七夕賞だった。
「精神面で成長していたし、状態は引き続き良かったので、結構、自信を持って送り込む事が出来ました」
ゲートが開くと鞍上の手綱捌きが光った。4番枠から「行く気になれば行ける」(戸崎騎手)という好スタートを決めたが、控え、道中は後方を追走した。
「メンバーを見ても前が速くなると思ったので、行きませんでした」
正解だった。1000メートルの通過ラップは57秒台。案の定、先行勢は皆、苦しくなる中、最後は後方から豪快な伸び脚を披露。前をまとめて捉え、先頭でゴールイン。レッドラディエンスにとって初めてとなる重賞制覇へ、見事にエスコートしてみせた。
これが誕生日前日だった戸崎騎手は、言う。
「道中もずっと良い感じだったので、後は自分が追い出すタイミングさえ間違わなければ勝てると思って乗っていました」
友道調教師も言う。
「戸崎騎手も、前走を踏まえて追い出してくれたのだと思います。うまく行きました」
その後はノーザンファーム天栄に放牧された。「状態次第では新潟記念(GⅢ、9月1日)かな……」と今後について語る友道調教師は、改めて、転厩初戦だった22年の猪苗代特別(2勝クラス)を思い起こし、語った。
「あの時はまだ幼くて、装鞍所でも結構、うるさかったんです」
その様を見ていたのが蛯名正義調教師だった。藤沢和雄厩舎で、技術調教師時代を過ごし、レッドラディエンスも間近で見ていた蛯名正調教師は友道調教師に言ったそうだ。
「この馬、藤沢厩舎時代は厩舎装鞍をしていましたよ」
そんな言葉を思い起こし、友道調教師は改めて、そして感慨深そうに言った。
「そのくらいうるさい馬だったのに、成長してくれました。それが重賞制覇につながったのは間違いありません」
新たな重賞ウイナーの今後がますます楽しみだ。
(撮影・文=平松さとし)