2024.05.15
ルージュエヴァイユの黒岩調教師
今週末、東京競馬場では優駿牝馬(GⅠ)、通称オークスが開催される。
3歳牝馬クラシック第2弾で、樫の女王決定戦とも言われるこの大一番。2年前のこのレースで6着と善戦したのがルージュエヴァイユ。管理するのは美浦・黒岩陽一調教師だった。
黒岩調教師は、競馬とは無縁の家庭で育ち、中学、高校時代はソフトテニスに興じたという。その後、大学進学と共に馬術部に入った事から、馬との生活が始まった。
「実際に馬に携わるようになったのは大学に入ってからでしたけど、初めて競馬を見たのは中学生の時でした。それが、ナリタブライアンが勝った日本ダービーで、以来、競馬の世界で働くのも良いなって考えるようになりました」
大学卒業後、牧場に就職。更にその後、競馬学校を挟んで2007年には美浦トレセン入り。開業したばかりの鹿戸雄一厩舎で調教助手としてこの世界のキャリアをスタート。当時、厩舎には桜花賞(GⅠ)やオークス(GⅠ)で2着するエフティマイアやジャパンC(GⅠ)を勝つ事になる(いずれも08年)スクリーンヒーローらがいた。
「スターホースがいるお陰で、厩舎が活気づいていたし、何かと勉強になりました」
11年には2度目の受験で難関・調教師試験を突破。当時まだ31歳という若いトレーナーが誕生した。
「この世界に入った時から調教師を目指していました。そういう意味ではまず一つの目標を達成出来たけど、本当の目標は調教師になった後だと思っていました」
やがて大きいところを勝つというのも、言わずもがなの目標の一つだった。
すると開業4年目の15年には管理するミュゼエイリアンで初めて重賞を勝利(毎日杯)し、同馬と共に皐月賞(GⅠ)や日本ダービー(GⅠ)にも挑んだ。
また、21年の阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)では、ラブリイユアアイズが2着に善戦。こうしてGⅠ制覇までもう少しのところまで迫ってみせると、昨年の阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)ではアスコリピチェーノがついに先頭でゴールイン。黒岩調教師にとっても初めてとなるGⅠ制覇を果たしてみせた。
こうして確実にステップアップしている黒岩調教師だが、先述した通り、キャリアの開始は牧場だった。そして、そこは伯楽・藤沢和雄調教師(引退)が関わる牧場だった。黒岩調教師が当時を述懐する。
「牧場に就職した当初から『将来的には調教師になりたい』と話していたところ、事ある毎に、藤沢先生から『調教師ならどう対応する?』と聞かれ、実際にそれに沿って対処法などを教えていただけました」
このように伝説の調教師が礎となっている黒岩調教師は、今後もますますの活躍が見込める事だろう。
ちなみに冒頭で記した22年のオークス(GⅠ)で6着したルージュエヴァイユは、その後、23年にはエリザベス女王杯(GⅠ)を2着、今年に入ってからも大阪杯(GⅠ)で3着と善戦。今後は6月23日の宝塚記念(GⅠ)を目指すという。好結果を期待したい。
(撮影・文=平松さとし)