2024.04.30
香港国際3レースを終えて
先週、現地時間4月28日、香港でチャンピオンズデーが開催された。沙田競馬場を舞台に国際3競走、すなわちチェアマンズスプリント(GⅠ、芝1200メートル)、チャンピオンズマイル(GⅠ、芝1600メートル)、クイーンエリザベスⅡ世C(GⅠ、芝2000メートル、以下QEⅡ)が行われたのだ。
今年はその3つのカテゴリーのレースに日本馬8頭が出走した。しかし、いずれのレースも香港の厚い壁に阻まれ、先頭でゴールする事は出来なかった。
チェアマンズスプリントに出走した2頭は残念ながらブービーと最下位の10、11着という結果だった。2頭のうち1頭はGⅠの高松宮記念を勝ったマッドクールで、果敢に先行してみせたが最下位に沈んだ。
同馬は昨年の香港スプリント(GⅠ)でも8着に敗れている。当時はスプリンターズS(GⅠ)2着からの参戦だったが、競馬をさせてもらえなかった。
思えばこの短距離のカテゴリーは昔から日本勢が苦戦していた。2012,13年に連覇したロードカナロアのような例外を除けば、数多の日本のGⅠホース達が、いずれも二桁着順に敗れている。ショウナンカンプやビリーヴ、カルストンライトオやレッドファルクスにナランフレグ等々。
しかし、これは日本馬が弱いというわけではなく、香港馬が強いという事が、香港スプリンターの世界での活躍をみるとよく分かる。
例えば15年に高松宮記念を勝ったエアロヴェロシティや10年にスプリンターズSを優勝したウルトラファンタジー、同じく05年のスプリンターズSの覇者サイレントウィットネスら、それほど沢山来日するわけではない香港馬だが、しっかりと答えを出すケースは多い。今春、高松宮記念に挑んだビクターザウィナーも5番人気ではあったが馬券圏内の3着に好走した。
香港の短距離馬が海を越えて活躍する例は何も日本にとどまった話ではない。
記憶に新しいところでは今年のドバイでアルクォーツスプリント(GⅠ)を制したカリフォルニアスパングルがいるが、古い例では12年にイギリスのロイヤルアスコット開催でキングズスタンドS(GⅠ)を勝ったリトルブリッジや10年、14年にアルクォーツスプリントを勝ったジョイアンドファンとアンバースカイ、14年のドバイゴールデンシャヒーン(GⅠ)ではスターリングシティーとリッチタペストリーの香港勢でワンツーフィニッシュを決めた事もある。
短距離戦はオセアニア勢が世界中で活躍しているわけだが、オーストラリアやニュージーランドからの移籍馬が多い香港馬も、同様にこのカテゴリーは強いといえるのだろう。
一方、日本勢が得意とするのは2000メートル前後の中距離のカテゴリーだ。
今年のQEⅡは、勝ちこそ出来なかったがプログノーシスが2着でノースブリッジが3着。日本馬の中では最も成績の悪かったヒシイグアスでも5着と、上位5頭の中に3頭全ての日本馬が入ってみせたのである。
それも、勝ち馬はかの地の絶対的王者で、オーストラリアでもコックスプレート(GⅠ)を勝っているような名馬ロマンチックウォリアーだ。プログノーシスはこれと僅かクビ差だったわけだが、思えば昨年も同じレースで同馬の2着になっているのだから、この日本馬の実力も疑いようがないところと考えて良いだろう。
今年好走した日本馬3頭に共通しているのは、いずれも日本ではGⅠを勝っていないという点である。これも昔からこういう傾向がある。12年のルーラーシップ、17年のネオリアリズム、19年のウインブライトはいずれも日本国内でGⅠを勝っていないのに、このレースを制して見せた。同じ沙田競馬場の芝2000メートルが舞台となる香港カップ(GⅠ)に目を移しても16年のエイシンヒカリや先述のウインブライトが19年に勝っている。
また、エイシンヒカリにおいては16年にフランスのイスパーン賞(GⅠ、この年はシャンティイ競馬場の芝1800メートルで施行)も勝っているし、他にもシンガポール航空国際C(当時GⅠ)を勝ったコスモバルク(06年)とシャドウゲイト(07年)、ドバイターフを勝ったリアルスティール(16年)やパンサラッサ(22年、1着同着)等、同様の例は枚挙に暇がない。
これはダートでも同様の事が言え、23年のサウジC(GⅠ)を制したパンサラッサに22年のBCディスタフ(GⅠ)勝ちのマルシュロレーヌらもやはり中距離戦での優勝劇だった。
日本でGⅠを勝てていなくても世界のGⅠで通用する中距離戦に於ける傾向は、日本のGⅠ馬が苦戦を続けるスプリント戦とは明らかに違うだろう。
実はこれ、2400メートル戦だと、ヨーロッパ勢が同様のデータ、すなわち世界中で通用するという傾向がある。凱旋門賞(GⅠ)で日本勢が苦戦を続けるのも、これと無関係ではないと思えるのだが、それはまた別の機会に記させていただこう。
(撮影・文=平松さとし)
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