2024.04.02

ドバイワールドCを終えて見えてきたモノ

 現地時間3月30日、ドバイ、メイダン競馬場でドバイワールドCデーが開催された。
 日本馬は7つのレースに22頭が出走。勝利したのはUAEダービー(GⅡ)に出走したフォーエバーヤング(牡3歳、栗東・矢作芳人厩舎)のみだったが、各GⅠレースでも2、3着に好走する馬が続出。どのカテゴリーでもそれなりに好勝負が出来る層の厚さを世界に披露した。
 中でもメインのドバイワールドC(GⅠ)での日本の各馬の善戦は何年か前までは想像もつかないモノだった。
 今年の同レースは逃げたローレルリバーが道中、徐々に後続との差を広げると、最後の直線に向いた時にはその差が更に広がるというドバイワールドCにありがちな流れ。結果、2着に8馬身半もの差をつける圧勝劇で幕を閉じた。
 後続馬は何も出来ない展開になってしまったわけだが、それでも4頭出走した日本馬は2、4、5、6着といずれも上位でゴールを駆け抜けてみせた。
 これが海外初遠征となり、若い原優介騎手を乗せたウィルソンテソーロ(牡5歳、美浦・小手川準厩舎)は2着とは5馬身ほどの差となる4着。馬体を並べウィルソンテソーロから短頭差の5着だったのがドゥラエレーデ(牡4歳、栗東・池添学厩舎)。そして「ゲートでうるさくなってスタートを決められなかった」(O・マーフィー騎手)という誤算のあったデルマソトガケ(牡4歳、栗東・音無秀孝厩舎)も6着まで追い上げた。
 そして何と言っても2着となったウシュバテソーロ(牡7歳、美浦・高木登厩舎)である。
 昨年のドバイワールドC(GⅠ)をモノ凄い差し脚で勝利した時は、日本馬がこの舞台で通用するのだと、驚かされたモノだが、その後の活躍から、今では全く驚くには値しない当然の好走と思えるまでになった。
 昨秋のブリーダーズCクラシック(GⅠ)こそ5着に敗れたが、帰国後、東京大賞典(JpnⅠ)を勝つと、サウジC(GⅠ)でも2着。ゴール直前、セニョールバスカドールにこそ差されたが、先に先頭に立つ競馬で頭差の惜敗。勝ち馬に勝るとも劣らない内容で、今回、勇躍ドバイへ移動した。
 ドバイワールドCは先述した通り、このレースにありがちな前へ行った馬が後続との差をどんどん広げてフィニッシュするという競馬になってしまったため、道中後方にいたウシュバテソーロは最後まで勝負圏内に食い込めなかった。それでも最後はサウジCの覇者セニョールバスカドールを差しての2着。世界の最高峰での再三の好走は、フロックではない事の証明であり、彼自身だけではなく、日本馬全体のレベルの高さを改めて感じさせた。
 ちなみに芝路線ではもう何年も前から世界に出ても互角以上の勝負を見せている日本馬だが、とくに顕著なのは中距離戦での活躍だ。古くはシャドウゲイトやルーラーシップ、その後もエイシンヒカリやウインブライトなど、日本でGⅠを勝っていない馬が海外でGⅠを勝つ例としては圧倒的に中距離路線が多い。これは2400メートル路線でヨーロッパのGⅠを制した馬が未だに1999年のエルコンドルパサー(サンクルー大賞典)1頭しかいないとは対照的だ。凱旋門賞(GⅠ)には毎年のように日本馬が挑戦しているのに……である。
 中距離戦での日本馬の強さというのはダート路線での近年の躍進とも無関係ではないと思う。ダート路線のスタンダードは中距離戦。ドバイワールドCだけでなく、ブリーダーズCクラシックやケンタッキーダービー(GⅠ)は皆、2000メートルだし、世界最高賞金額のサウジCは1800メートル。ここに日本馬が台頭してきた下地があったと思えるのだ。つまりは長年挑戦し続けている芝の2400メートル路線組を差し置いて、中距離が舞台という日本馬にとってはアドバンテージのあるダート路線組が追い抜いて行ったと思えるのだ。そう考えると3年前にブリーダーズCディスタフ(ダート1800メートル)を制したマルシュロレーヌ(栗東・矢作芳人厩舎)の激走も、合点がいくというモノで、ダート路線に於ける日本馬躍進のヒントは、すでに彼女の偉業に隠されていたのかもしれない。
 さて、ウシュバテソーロはこの秋には再びアメリカへ飛び、ブリーダーズCクラシックでの雪辱を目指すという。引き続き刮目したい。
(撮影・文=平松さとし)