2024.03.13

阪神大賞典を制したシャケトラ

 今週末、阪神競馬場では阪神大賞典(GⅡ)が行われる。例年、4月末に行われる天皇賞・春(GⅠ)を占う意味でも重要な1戦。これを2019年に制したのがシャケトラ(栗東・角居勝彦厩舎)だった。
 同馬は16年、3歳未勝利戦でデビュー。ここを勝利すると、4戦して3勝という成績で初めて重賞に挑戦する。17年の日経新春杯(GⅡ)だ。
 それまでとは一段と相手関係が強化されたここではミッキーロケットの2着に敗れてしまう。しかし、デビューからここまでキャリア僅か4戦しかない状況で、後に宝塚記念(GⅠ)を勝つような馬を相手に善戦したのだから、素質の片鱗は見せたと言って良いだろう。
 その答えを、シャケトラ自身がすぐに出す。続く日経賞(GⅡ)を、初タッグを組んだ田辺裕信騎手を背に勝利。初重賞制覇をマークしたのだ。
 「『弱いところがあって無理出来ず、数を使えなかったけど、今はパンとして、強い負荷をかけられるようになったので何も心配ありません』。厩舎からはそう伺っていました」
 そう口を開いたのは田辺騎手だ。
 「ゴールドアクターやディーマジェスティなど、好メンバーが揃っていたので、皆が勝ちに行く競馬をして体力を削りあった後、動けば面白いかも、という気持ちで乗りました」
 この作戦が見事に奏功し、優勝した。
 その後、この年の有馬記念(GⅠ)までは順調に使えた。GⅠ勝ちにはなかなか手が届かなかったが、宝塚記念(GⅠ)4着、有馬記念(GⅠ)6着等、いずれチャンスが回ってくるのでは?と思える競馬を繰り返した。
 しかし、好事魔多し。シャケトラは再び暗礁に乗り上げる。左第3中手骨骨折という大怪我を負い、約1年1カ月に及ぶ長期休養を余儀なくされたのだ。
 こうして18年にはただの1度も競馬をしなかった同馬が、ターフに戻って来たのは19年1月。アメリカジョッキークラブC(GⅡ)となった。
 このレースでコンビを組んだのは石橋脩騎手。出馬表が発表された段階では戸崎圭太騎手になっていたが、インフルエンザに罹患してしまい、急きょ乗り替わりとなったのだ。
 石橋脩騎手はこの代打による仕事をキッチリとこなす。自身も前年に負傷をしていた。他馬の進路妨害により落馬し、右足関節脱臼骨折。騎乗を予定していたラッキーライラックによる秋華賞(GⅠ)等、約3カ月間、乗れなくなった。復帰したのは19年の1月。復帰後2週間で回ってきたのがこの時のシャケトラだった。
 「チャンスをいただけたので、何とか期待に応えたいと思いました」
 そんな心意気を持って臨んだ結果での優勝劇だった。
 この勝利の次走が、冒頭で記した阪神大賞典(GⅡ)だった。鞍上は戸崎騎手。シャケトラ自身、初めて重賞で1番人気の支持を受けると、2着を5馬身も突き放し快勝。一躍、天皇賞・春(GⅠ)でも主役を争う存在になった。
 しかし、それから僅か2週間後の4月17日、思わぬバッドニュースが耳に飛び込む事となる。春の盾を目標に調教されていた最中に、左前第1指骨粉砕骨折を発症。あっという間に帰らぬ馬となってしまうのだった。
 もし無事に天皇賞・春(GⅠ)に駒を進める事が出来ていたら、果たしてどんな結果が待っていたのだろう。考えてもせんないことなのは分かっているが、そう思わずにはいられないのだった。
(撮影・文=平松さとし)