2024.02.28
カジノドライヴから16年、ダートに於ける日本と世界の差
現地時間2月24日、サウジアラビアのキングアブドゥルアジーズ競馬場でサウジC(GⅠ、ダート1800メートル)が行われた。
総賞金2000万米ドル(約28億円)、1着賞金1000万米ドル(約14億円)という世界最高賞金額の競走。昨年はパンサラッサが逃げ切りで制したこのレースに、今年も5頭の日本馬がエントリー。メイショウハリオの出走取り消しこそあったものの、4頭がゲートに納まった。
中でも注目されたのはウシュバテソーロ(牡7歳、美浦・高木登厩舎)とレモンポップ(牡6歳、美浦・田中博康厩舎)。JRAで発売されたこのレースの馬券でも、2頭はアメリカのホワイトアバリオに続く2番人気を争った。前者は昨年のドバイワールドカップ(GⅠ)の覇者であり、後者はフェブラリーS(GⅠ)とチャンピオンズC(GⅠ)を勝利してJRA賞最優秀ダート馬に選定された馬。中東に集った日本のダート界の2強に、熱い視線が降り注いだ。
しかし、結果は思わぬ差がついた。最後方から進んだウシュバテソーロが、直線豪快に伸び、一瞬、先頭に躍り出る素振りを見せたのとは対照的に、いつもの先行策を取らなかったレモンポップは最後までとくに見せ場を作る事もなく、馬群に沈んでしまった。
最後はウシュバテソーロもアメリカからの遠征馬であるセニョールバスカドールに差されたが、2着に善戦。一方のレモンポップは12着だった。
勝てなかったという意味では2頭とも残念ではあるが、それでもウシュバテソーロは勝ち馬と僅かアタマの差。管理する高木登調教師は次のように語った。
「内容的には勝ったも同然の競馬でした。ほんの少しだけ差されて、残念ですが、よく頑張ってくれました」
「日本馬が強くなった」と言われて久しいが、ことダートに関してはほんの数年前までは、時折善戦する馬が現れるものの、全く勝負にならないケースが圧倒的に多かった。世界中でGⅠ勝ち馬が出ている芝路線と比べると、ダート路線で世界を相手に互角に戦える馬が出るまでにはまだまだ時間を要すと考えられていた。
ところが、ここ何年かのダート路線に於ける日本馬の活躍は目覚ましいモノがある。先述した通り昨年のドバイワールドカップはウシュバテソーロが優勝したし、ブリーダーズCクラシック(GⅠ)でもデルマソトガケ(牡4歳、栗東・音無秀孝厩舎)が2着。今回のサウジアラビアのサウジCデーでは日本勢の中から2頭だけ勝ち馬が出たが、フォーエバーヤングが制したサウジダービーも、リメイクの勝利したリヤドダートスプリントもいずれもダートの競馬。ダート戦においても、日本馬が世界との差を急速に詰めた事の分かる結果だった。
カジノドライヴがキャリア2戦目でアメリカのGⅡ・ピーターパンSを勝った時(2008年)は大変なニュースだと思えたが、それから16年。もはやダートのビッグレースで日本馬が好走するのは不思議ではなくなって来た感すら受けた。
(撮影・文=平松さとし)