2023.09.28
サンデーサイレンス越え
ご承知のように、ディープインパクトがこの日曜に2勝を挙げて、偉大な父サンデーサイレンスのJRA勝利2749勝に、〝あと1勝〟で並びます。長い間〝永遠不滅の大記録〟とホースマンの誰もが信じてきました。なにしろサンデー以前の記録が、ノーザンテーストの1757勝でした。それを越えも越えたり1000勝近く、これはもう星の彼方と言うしかありません。〝永遠不滅〟と思われたのも当然でしょう。
しかし勝利数だけで、彼らの優劣は物語れません。勝利数のベースには、産駒頭数の多寡が大きく影響しているからです。順に並べてみると、テーストが23年間の種牡馬生活で1008頭、サンデーは12年間で1514頭、ディープは13年間で1776頭と年を追うに連れ増加して来ました。これは医療を含めたサラブレッドのケア技術の目覚ましい進歩が貢献している部分が大きく貢献しているのでしょう。
しかし年間100頭以下に種付けをセーブしていたノーザンテーストが33歳の長寿を全うしたのに対して、13年中最低でも171頭、内11回も200頭以上と大車輪の働きをしたディープが、働き盛りの17歳で早逝したのは惜しまれてなりません。父サンデーも16歳で偉大な生涯を閉じていますから、〝寿命〟もしくは〝天命〟と諦めるしかないのでしょうか。
さて、話はディープに戻ります。日曜の勝ち鞍が障害とダートだった〝ディープらしからぬ〟さを含めて、時間的にもちょっとモタついた印象もありますが、もともと有力馬の多くが夏休み中の時季でもあり、これまではフレッシュな2歳馬がこの空白期を埋めたものですが、今年からは2歳世代ゼロとなっています。〝ディープらしからぬ〟モタつきも仕方がなかったでしょう。日曜には阪神でサトノグランツがG2神戸新聞杯を〝ディープらしい〟切れ味で、父サトノダイヤモンド・祖父ディープインパクトへと遡る父系3代制覇を成し遂げました。同一重賞3代制覇は史上初だそうです。こうなると夢は菊花賞、有馬記念の三代制覇へと夢が拡がります。今後は〝ディープの庭〟である京都・東京開催がともに2カ月ロングランで組まれています。この夏とは別馬のような溌剌さを披露してくれるはずです。
〝夢の大台3000勝〟突破もタスク(使命)の一つでしょうが、気になるのは重賞勝ち鞍です。ここまでサンデー311勝、ディープ286勝と未だ25勝差があります。しかしグレードレースの25勝というのは厳しいハードルです。一流の種牡馬が、一生かけてたどり着く栄光です。将棋の世界で言えば、「飛車角」までは行かなくても「金銀」落ちくらいの布陣で臨むわけですから、なかなか苦労させられそうです。ただしG1勝利数に限れば、ともに71勝のタイでピッタリ鼻面を並べており、どこかで抜け出し追い越すチャンスがあるでしょうが、それが前出の菊花賞だったりしたら、盛り上がりも2倍3倍ですね。期待したいと思います。