2023.04.26

ジャパニーズ・コンテンツの底力【前】

この週末から日本公開されるアニメ映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は、既に先行上映されたアメリカで3週連続No.1の大ヒットを記録。全世界興行収入は1000億円を超え、アニメ映画史上最高記録を次々と塗り替え続けているそうです。老若男女を問わず幅広い層に浸透し、日本人なら知らない人はいないほどのスーパーコンテンツですから、ゴールデンウィークの映画館は大いに盛り上がりそうです。それにしても『WBC・侍ジャパン』の活躍や、パンサラッサの“サウジの大逃走”で幕を開けて、イクイノックスの“大楽走”からソールオリエンスの“直線一気の急襲”まで世界を驚かせた『日の丸サラブレッド』の覚醒劇など、一口に言って『ジャパニーズ・コンテンツ』が分野を超えて飛躍を果たしています。

これらは、「たまたま」とかではなく、「これっきり」で終わる話でもなく、マリオを追いかけるスーパーキャラクターはたくさんいますし、WBCに負けない興奮や感動を紡ぎ出してくれるアスリートやアーティストは野に溢れています。もちろん競馬の世界にもヒーロー予備軍は数え切れないほどいるはずです。そんなとき、ライアン・ムーア騎手のインタビュー記事を興味深く読みました。毎年のように短期免許で日本を訪れる彼は、世界最高の「日本ウォッチャー」と言って良く、世界を代表する名伯楽エイダン・オブライエン調教師も、彼の広い経験と深い知識を大いに頼りにしています。オブライエン厩舎に在厩するディープインパクト・ハーツクライ・ロードカナロア産駒が水準を遥かに超える走りを見せるのは、“ライアン効果”と言っていいでしょう。その“日本通ライアン”が地元ブックメーカーのインタビューに答えて、イクイノックス、ソールオリエンス、リバティアイランドの走りを「滅多にないパフォーマンス」と絶賛しています。

その「滅多にないパフォーマンス」はどこから生み出されるのか?ライアンは、こう断言します。「彼ら日本馬は、ヨーロッパの馬のように他国のクラシックに出ることがなく、G1が真の頂上決戦として機能しているからレベルが高い。だから彼らは強くなる。彼らに簡単には勝てないのです」と。ヨーロッパではクラシックともなると、とくに日程が重なり合うイギリスとフランスで使い分けるのは普通になっており、ゴドルフィンに代表されるようにドイツやイタリアのクラシックに遠征することも珍しくありません。力のある馬が分散して戦うのが、近年のヨーロピアンクラシックのトレンドになっています。それらのレース群は自ずとランキングされますから、最強グループ、2番手グループ、場合によっては3番手グループに分かれて戦います。ライアンが懸念するほどレベルダウンすることはないでしょうが、クラシックやG1頂上戦が、唯一無二の至高の戦いとなり得ないのは、ライアンが語る通りでしょう。G1レースの存立基盤というか、その在り方をライアンは問題にしているようです。そのあたりを、もう少し考えてみたいと思います。