2023.02.14

ロベルト系の真骨頂

昨日に続いて“小倉ネタ”の連発です。土曜の障害OPでは、9ヵ月ぶりの復帰戦ながら相変わらずウットリさせてくれるフォッサマグナの美しいジャンピングフォームに見惚れました。日曜のメインは、“残念・高松宮記念”とでも言えばいいのか、平地のOP「北九州短距離S」が組まれていました。ちょっと収得賞金が足りなくてG1出走までには手が届かない、そんな“残念な”メンバーが他日を期すべく参集しました。人気は近走の充実ぶりが著しく、まだ明け4歳と若い分だけノビシロが見込めるカルネアサーダ、ダークペイジあたりにスポットライトが当たっていますが、帯に短し襷に長し、逆に言えばヒトクセもフタクセもある多士済々の顔ぶれが揃いました。

案の定と言うべきか、道悪のコースで激しく先を争って、ゴール前は先行馬、追い込み馬が入り乱れての大混戦となります。際どくハナだけ抜け出したのは5歳せん馬ヴァトレニでした。父がグラスワンダーという稀少な血統の持ち主で、ロベルト系の息長く戦い続ける奥深い生命力に、改めて驚かせられました。先日もロベルト系の驚くべき“丈夫で長持ち血統”ぶりを眺めましたが、まさかヴァトレニがここで激走するとはビックリしました。グラスワンダーは今年28歳の大長老ですが、ヴァトレニは23歳時の産駒に当たります。本当にロベルト系の真骨頂を見せられた思いです。「真骨頂」とは、そのものが本来備えている姿を指しますが、衰えを知らぬ生命力、活気を失わない精神力、何より丈夫で頑健な身体力、そして張りつめた気力の逞しさには、ほとほと感嘆させられます。

さて、小倉とほぼ同じ時間帯に東京で行われたダート1400mのOPバレンタインSは、先行勢が互いに譲らず、テンの3ハロンが33秒5と緩みのない厳しい流れとなりました。激しく競り合う先行勢の中心にいた1番人気のレッドゲイルが、直線半ばで押し出されるように先頭に立ったのを合図に、待機勢が牙を剥(む)いて一斉に襲い掛かります。こうなると追うものの強み、若いハセドンの切れ味がまさり、ルフトシュトロームのゴール前のベテランならではの立ち回りが光ります。結局レッドゲイルは手に入れかけた金星を握り損ねる4着に泣きました。展開のアヤと言えばいいのか気の毒な結果に終わります。しかし終わってみれば、ハセドンは小倉で勝鬨(かちどき)を上げたグラスワンダーの孫モーリスの息子です。ハセドンからみれば、曽祖父の快挙に励まされての曾孫の大金星、父系4代を超えてのドラマが大円団を迎えた形になりました。もともと3歳時にはOP青竜Sを直線一気の末脚で差し切って3連勝を飾り、大きく広がった未来を嘱望(しょくぼう)された大器です。休養を経て立て直されたとあれば、さらなる前進を期待しても良さそうです。フェブラリーSには間に合いませんでしたが、今後は重賞戦線の常連を張ってくれそうです。

大長老グラスワンダーもまだまだ矍鑠(かくしゃく)と若さを失わない元気を見せ続けてくれるでしょうし、牧場ではプライベート待遇で大事にされているスクリーンヒーローも、老け込む年ではありません。モーリスはシャトル先のオーストラリアでもクラシック馬を輩出して、日本以上に大きな期待を集めています。そもそも海外では日本の優良馬が持つサンデーサイレンスの血が、基本的にはアウトブリードとして働きますから、多様性にあふれ可能性を押し拡げる血統展開という面では、日本以上に成功の果実が得られても驚けません。こうした壮大とも思える挑戦に、ロベルト系の“丈夫で長持ち”の真骨頂が生きるはずです。