2023.01.30

種牡馬戦線、波高し

この週末はレッドラマンシュとレッドモンレーヴの快勝を含めて、ロードカナロアが7勝の固め打ちをやってのけ、悲願のリーディングサイアー戴冠へアタマひとつ抜け出した感じです。昨年も“競馬始め”の中山金杯でレッドガランがいきなり“勝利のお屠蘇”を飲み干しています。そもそも正月開催のシンザン記念をアーモンドアイが直線一気に突き抜けたのがカナロアの重賞初制覇だったように、例年スタートダッシュは抜群に良い種牡馬です。年末年始を挟んで調整の難しい時季でも、仕上がりに手間取らない気の良さと賢さを備えているのでしょうね。季節柄、ダート番組も多く組まれ、芝もパンパンの良馬場は望めません。こうした多様な状況にも対応できる器用さや飲み込みの早さも大きな武器になっているはずです。アーモンドアイがジャパンCで2400mを2分20秒6の世界レコードで駆け抜けたように、距離の長短やレースの流れにも左右されない心身の強靭さは、サラブレッドにとって理想の境地かもしれません。

ただ気になるのは、このアーモンドアイや2年目のサートゥルナーリアのように、クラシックはもちろんG1レースを勝ちまくるような“超大物”の姿が、ちょっとご無沙汰な辺りでしょうか?とは言え、そもそものJRA登録頭数、出走頭数、勝ち上がり頭数、総勝利数などあらゆるファクターで他の追随を許さない圧倒的な陣立てを誇っています。種牡馬生活10年目の今年で15歳、成熟して油の乗り切った時季に入っています。11年連続でチャンピオンの座を独占中のディープインパクトも、例年なら彼の稼ぎの中枢だったクラシック世代が6頭だけという“片肺飛行”、「ここで王座奪取できなったら、いつするの?」というお話になります。

ディープインパクトは11年連続してチャンピオンベルトを巻き続けました。ディープ登場以前に王座を2度獲得し、登場以降は7年連続してディープに続く“最強の銀メダリスト”として輝きを失わなかったキングカメハメハも忘れられません。とくに後継馬という点では、ロードカナロアを筆頭に、良血に油が乗って来たルーラーシップ、惜しくも早逝したドゥラメンテ、今年から産駒がデビューするレイデオロなどキンカメ系の優秀さはディープのそれに勝るとも劣らない美質を備えています。しかし先達が偉大であれば偉大であったほど、その境地に並び立ち、そこを超えていくのは簡単ではありません。その兆候は既にダート戦線において、姿を顕著にしようとしています。

今世紀に入って中央・地方を含めたダート戦線を牽引して来たのは、キングカメハメハ、ゴールドアリュール、クロフネなどのスーパースターに加えて、地方の雄サウスヴィグラスでした。しかし彼はすべて鬼界に入り、その後に台頭して来たヘニーヒューズ、パイロ、シニスターミニスターの“後継三羽烏”は揃って高齢に達しています。中央と地方がタッグを組んで、“全日本的な”スケールでダート番組体系の大改革に着手したばかりなのですが、思わぬ落とし穴が待ち構えていました。果たして“救世主”は現れるのか?この辺りを、少し考えて行きたいと思います。