2023.01.27

エクリプス賞との縁つながり

アメリカの部門毎のチャンピオンと、その頂点に立つ“ヒーロー・オブ・ヒーローズ”=年度代表馬を選ぶエクリプス賞の最終選考結果が発表されました。今回の年度代表馬は、圧勝に次ぐ圧勝を重ね、140ポンドと怪物フランケルに並ぶ史上最高レイティングに輝いたフライトライン以外に選びようのない選考でしたから、驚きとか意外性みたいなものはありません。でも、彼の走りっぷりのケタ違いの“異次元性”には、ただ溜息をつくばかりです。今シーズンは3回走っただけですが、始動戦となった6月ベルモント競馬場のG1・メトロポリタンHがマイル1分33秒59と芝並みのスピードで圧倒し6馬身差の大楽勝、続いて9月にサラトガで行われたG1・パシフィッククラシックSは馬なりのままドバイワールドCの覇者カントリーグラマーを千切るも千切ったり、実に19馬身余りも引き離して悠々のゴールイン。ラストランの今年はキーンライドを舞台に開催されたダート王国アメリカの最高峰レースであるブリーダーズCクラシックも鞍上が後ろを振り返りながら8馬身余りと競馬にもならない競馬で、全く無傷のまま競走馬生活の幕を下ろしています。

フランケルの爆走ぶりも凄かったのですが、フライトラインの走りも常識破りの破天荒さです。世の中、上には上がいるものですね。それにしても父タピットも凄い種牡馬です。3年連続して全米リーディングサイアーに輝き、種付け料は30万ドル(当時のレートで約3000万円)と世界一を誇っていました。しかし生産大国アメリカは広大な国土に馬産地が散らばり、種牡馬の数も多ければ、その個性も多様で非常に厳しい競争大国でもあります。現在のチャンピオンであるイントゥミスチーフに王座を奪われ、種付けフィーも値下がりしていたのですが、とんでもない大ホームランをかっ飛ばしたものです。後継馬フライトラインは初年度20万ドルと早くも父に迫る評価を得ており、父子の揃い踏みで競馬を一層盛り上げてくれそうです。日本でもタピットの血が、もう一度見なされるんでしょうね。

日本絡みで言えば、ブリーダーズCジュベナイルターフを勝って2歳チャンピオンの目もあったディープインパクト系サクソンウォリアー産駒ヴィクトリアロードは、残念ながら受賞から漏れてしまいました。しかし目下4連勝中と上潮に乗っており、同じエイダン・オブライエン厩舎のディープの忘れ形見オーギュストロダンと二頭三脚でクラシックを目指してくれるでしょう。わずかな数しか残っていないディープのラストクロップですが、最後の最後まで夢を見させてくれるあたりは、本当に偉い種牡馬です。感謝です。

今年から日本で産駒がデビューするアニマルキングダムが向こうに残してきたリーガルグローリーは、芝の牝馬チャンピオンに選出されました。連覇となったメイトリアークSなど、先季だけでG1を3勝して父の日本での門出に花を添えています。アニマルキングダムは初ダートがケンタッキーダービーで、何とそれを勝ってしまった変わり種です。自身も産駒も芝は得意にしています。リーガルグローリーと同じチャド・ブラウン厩舎に所属してG1・アメリカンオークスを制覇したデュオポリーは160万ドルの高額でノーザンファームに購入されており、こちらも楽しみが広がります。