2022.12.29
最後の最後で大逆転劇
JRAの今年の全開催日程が終了しました。売得金(売上)は3兆2539億円余りで、対前年比105.3%で11年連続の増大だそうです。良かったです。JRAはじめ関係者の方々、すべてのホースマン、ファンの皆さまに、競馬好きの一人として心からの敬意と感謝でいっぱいです。さて今年もいろいろありましたが、最後の最後、2022年の2歳戦のフィナーレを飾るG1ホープフルSは、14番人気ドゥラエレーデが逃げるトップナイフに、突き放されれば・追い縋(すが)り、また突き放されると・食い下がるデッドヒートの末に、ゴールライン上でハナだけ先に出ました。このハナ差で、父ドゥラメンテは2歳リーディングサイアー争いで先頭を走っていたエピファネイアを、わずかに80万円余り上回りました。1着賞金7000万円のレースでついた差がたったこれだけ、ミクロ圏の差と言えそうな劇的な大逆転でした。
ドゥラメンテは、阪神ジュベナイルフィリーズのリバティアイランドに続くG1は今年2勝目です。ここまで3世代が競走年齢に達していますが、すべての世代でG1制覇し通算7勝と破天荒な勢いで勝利を積み重ねています。この大レースになるほど滅法強くなる特質は、ディープインパクト・サンデーサイレンス父子、海外ならサドラーズウェルズ・ガリレオ父子などに共通のもでしょう。今さらながら、若くして世を去ったことが惜しまれてなりません。遺(のこ)された未デビュー組は後2世代、血統登録ベースで現1歳が118頭、現当歳は95頭だけとなっています。残された時間は長くありませんが、これだけ勝負強い血統ですから来季以降しばらくの間は、 11年連続でリーディングサイアーの王座を独占しているディープインパクトの後継にもっとも近い場所にいるのは間違いないでしょう。
ドゥラメンテは既に語り尽くされているように、曽祖母ダイナカール(父ノーザンテースト)、祖母エアグルーヴ(父トニービン)、母アドマイヤグルーヴ(父サンデーサイレンス)と、日本を代表する名種牡馬と名牝が紡ぎ続けて来た珠玉の血筋です。それだけに配合には熟慮に熟慮を重ねられ、主に海外の良血牝馬を中心に慎重にお相手が選ばれて来ました。良し悪しとは無関係ですが、初年度からデアリングタクトなどサンデーサイレンス (SS)4X3の大成功で、SSクロスに重心が移っているエピファネイアとは対極のポジショニングと言えるかもしれません。しかしドゥラエレーデは、オルフェーヴルの娘マルケッサとの間に生まれ、SS3X4のクロス持ちとなります。ドゥラメンテ産駒に、いそうで・いなかったタイプです。マルケッサは菊花賞と有馬記念を連勝したサトノダイヤモンドの妹で、遥かアルゼンチンに遡る牝系は力強いスピードとキレ味に奥の深さを添えています。ドゥラメンテにおける一味違った配合バリエーションとして頭の片隅にインプットしておきたいと思います。
このアルゼンチンを故郷とする牝系の魅力は、ヘイローの成功パターンを詰め込んだあたりが原点になっているのでしょうか?アルゼンチンを中心に南米各地でリーディングサイアーの常連となり大活躍したサザンヘイローの血を起点として、全姉にアメリカの歴史的名牝グローリアスソングがおり、種牡馬としてもタイキシャトルを出したデヴィルゥバッグを配合し、そしてサンデーサイレンスを重ねたマルケッサの血統表でヘイロー三巨頭が揃い踏みします。ヘイローは負けず嫌いの希少の強さが有名で、その稀有な勝負根性を子々孫々に伝えています。ドゥラエレーデのホープフルSのゴール前の踏ん張りは、このヘイローからシッカリ伝えられたものでしょう。一口に“SSクロス”というだけで片付けられない奥の深さを感じさせます。こうした感慨も含めて、ドゥラエレーデの劇的ドラマが、来季以降のドゥラメンテ大爆発の序章にならないかと思ったりします。