2022.12.13

来クラシックは“牝馬優勢”?

今年の2歳牝馬勢は、かなりハイレベルで粒揃いだと考えてきました。2歳重賞レースは、7月中旬のG3函館2歳Sに始まって、新潟・札幌・小倉を縦断し、秋のG2京王杯2歳S、G2デイリー杯2歳Sへとバトンを渡し、暮れのG1シリーズ3レースまで全部で14レースが組まれています。ここまで今週の朝日杯フューチュリティS、ホープフルSの G1を残して12レースが終了していますが、出走馬がいなかったサウジアラビアロイヤルC・京都2歳S・デイリー杯2歳S・東スポ杯2歳Sを除くと8戦7勝と牡馬を圧倒しています。この“強い牝馬勢”の2歳女王決定戦であるG1阪神ジュベナイルフィリーズは、重賞勝ち馬5頭を含めて出走馬18頭中の3分の2にあたる12頭が2勝馬と粒揃いのハイレベル戦となりました。

1番人気には1勝馬のリバティアイランドが推されました。ご存じのようにデビュー戦を上がり31秒4と“光速の神脚”で3馬身突き抜けた残像がファンの脳裏に強烈に焼き付けられているのでしょう。2戦目のアルテミスSも馬群に閉じ込められて身動きが取れない状況からクビ差2着まで急襲したアスリート魂は、“負けて強し”を絵に描いたような一戦でした。サラブレッドとしての完成度の高さは馬体の素晴らしさも含めてピカイチで、まったく底を感じさせない奥の深さがファンを魅了しているのでしょう。しかし世代No.1の可能性を持ってしても、出走メンバーの質の高さは並大抵ではなく、女王の証(あかし)となるティアラ戴冠は簡単ではないと思わせる今年の阪神ジュベナイルフィリーズでした。

ゲートが開いて十数秒で勝負は決まったように見えました。集中力をみなぎらせたスタートを決めると、前半33秒7とスプリント並みハイペースの流れでも難なく先行勢を俯瞰する直後と絶好の位置に収まりました。前走のように二重三重の包囲網に阻まれ、競馬をさせてもらえなかった痛恨の不利を受けないよう、安全な外めを落ち着いて追走。直線に向いて集中力をさらに高めると、一呼吸おいて周囲を確かめてからスパート、威風堂々と凱旋ロードを駆け抜けました。まったく危なげなく2馬身半突き放す完勝でしたが、道中の余裕を持ったレース運び、抜け出してから流した分を考慮すれば、着差以上に力量差が感じられる内容でした。“牝馬優勢”の下馬評がもっぱらの現状に鑑みて、ウオッカ以来の“ダービー牝馬”の声が高まるのも分かる気がします。

それにしても、この“スーパー牝馬候補”リバティアイランドを送り出したドゥラメンテの傑出した能力には驚かされます。再来年デビューの22年産をラストクロップに、わずか4世代のみを遺して早逝したのが、返す返すも無念でなりません。ここまで3世代でG1を6勝(内5勝は今年の勝ち星で右肩上がりの充実ぶりは特筆もの)は、エピファネイアの4世代で7勝に継ぐハイペースです。2歳リーディングでも急上昇しており、ほぼ独走体制を固めていたエピファネイアを猛追しています。残された高額賞金のG1朝日杯フューチュリティS、G1ホープフルSの結果次第では大逆転劇が見られるかもしれません。“ポスト・ディープインパクト”の盟主の座は、今となっては子孫たちに望みを託すしかありませんが、そうした観点からもドゥラメンテの血が、残された舞台で大見得を切る活躍を心待ちにしたい気持ちです。