2022.12.08

ダート競馬の新風景

ダート競馬の“大改革”がスタートします。ご承知のように、JRAと地方競馬を統轄するNARが二人三脚で取り組んでいる「全日本的なダート競走の体系整備」が先月末に発表され、中央競馬・地方競馬の枠を超えた全日本的な競走体系の構築を進め、さらに国際的な評価を高めるために、現在の交流競走で使用されている「Jpn-1」などの標記を廃止し、すべてのダートグレード競走を段階的に国際競走とすることを計画しています。現在は地方競馬では東京大賞典が唯一の国際競走としてG1に格付けされていますが、いずれはすべての重賞競走が中央・地方・海外の別なく開放されたG格付けレースとなります。

こうした“大改革”を通じて、何が変わるのかと言えば、ダートホースの地位が向上し、その価値がこれまではとは別次元へと跳ね飛びます。これまでダート競馬、とくにJRAの番組編成では“冷遇”とグチりたくなるほど顧みられることがありませんでした。中でも2歳秋から3歳春にかけて1勝クラス以上のダート番組は数えるほどしかなく、ダート適性に秀でた馬は出走機会がほとんどないままクラシックシーズンを迎えねばなりませんでした。一説には、ダート戦で賞金加算した馬が大挙してダービーに出てくるような“異常事態”を避けるためとも囁かれました。それでも“鬼っ子”は時に出現するものです。実際にサクセスブロッケンがダート4戦4勝、デビュー戦を3秒1の大差にブッちぎると、相手が強くなっていく2戦目以降も3馬身半、4馬身、5馬身と鰻登りか昇龍か、凄まじい地力強化で底を見せないままダービーに挑戦します。“判官贔屓(ほうがんびいき)”のファンは彼を3番人気に“推し”上げますが、さすがに力及ばず最下位に花と散っています。生まれるのが、ちょっと早過ぎたようです。“ダート大改革”後の世界なら、彼ほどの才覚を持ってすれば、まったく別の風景を見ていたはずです。

ダート競馬の新体系では、羽田盃、東京ダービーがJRA所属馬にも開放され、ジャパンダートダービーから改称されるジャパンダートクラシックとダート三冠戦を形成します。賞金も三冠ボーナスを加えると3億円の大盤振る舞いです。名誉も褒賞も申し分なく、前出のように無理を承知のダービー挑戦といった“悲劇”もなくなりそうです。新体系は2歳戦に始まって、3歳戦から古馬混合戦、牝馬限定戦ときめ細かな目配りをしています。ダート競馬をめぐる景色が、文字通り一変することになりそうです。

この新体系は2歳戦は現1歳馬を対象とする来季から、3歳戦以上のカテゴリーは再来季のスタートとなります。来年の種付け予約がたけなわの昨今、こうした潮目の転換期に牧場の皆さんは敏感ですね。いち早く満口となった種牡馬の顔触れには、クリソベリル、ルヴァンスレーヴ、リオンディーズ、ホッコータルマエ、マインドユアビスケッツ、ヘニーヒューズなど人気の高い常連馬に混じって、新種牡馬チュウワウィザードも名を連ねています。価値向上が見込めるダートホースに脚光が当たりはじめているようです。今後はグラス(芝)ホースといえども、ダート適性の有無がシビアにチェックされる時代になっていくのでしょうか?血統のフレームや配合のあり方などにも小さくない影響が及んでくるのでしょうね。