2022.09.27
凱旋門賞前夜【後】
昨日、凱旋門賞の第1回登録取消が受け付けられ、100頭近い登録馬の4分の3ほどがゲートインを断念して、残る24頭が出走意思をホールドしています。明日28日に追加登録馬を加えて出馬登録が行われ、フルゲートの20頭が決まります。ちなみに12万ユーロ≒1670余万円と高額な追加登録料を支払っても出走したいのは、オーストラリアから地元フランスへ転厩して準備を重ねて来たベリーエレガントです。英オークスを勝っているクールモアのチューズデーも登録を残していますが、追加登録料を払うところまで行くのでしょうか?そして明後日には騎乗騎手が決定します。ここまで来ると、ブックメーカー各社の提示オッズもリアリティを増して、いよいよ本番間近!ピリピリと緊張感が高まって来ます。
現時点で1番人気はウィリアム・ヒルの場合は6.5倍でエイダン・オブライエン厩舎のルクセンブルクがリーディングボードの最上段を占めています。2歳時からダービー候補と大変な評判になりながら、ケガでクラシックを棒に振り秋口にようやく復調、カラのG3とレパーズタウンのG1愛チャンピオンSを連勝して本番に間に合わせて来ました。破った相手が、昨日もご紹介したガリレオ≒シーザスターズの異父兄弟クロス2X2とゴリゴリの凱旋門賞血統オネスト、アガ・カーン殿下=クリストフ・スミヨンの凱旋門賞には欠かせない黄金タッグで挑む仏ダービー馬ヴァデニ、1着1000万ドル≒14億円のサウジCで男を上げた賞金王ミシュリフなど多士済々の強敵揃いでした。父キャメロットはデビューから無敗のまま英2000ギニー、英ダービー、愛ダービーと連戦連勝、近年には珍しくニジンスキー以来42年ぶりとなる三冠馬に勇気あるチャレンジに踏み切った馬です。結果は残酷で、わずかの差でセントレジャーを2着に取りこぼし、疲れを残したのか次走の凱旋門賞もオリビエ・ペリエの伏兵馬ソレミアとスミヨン騎乗のオルフェーヴルとの壮烈な叩き合いから遥かに遅れた7着に敗れています。世代レベルに疑問を抱かれたり、不運なところがあったりで、ちょっと尻すぼみな競走生活でしたが、種牡馬としては期待以上に順調に一流サイアーへの道を歩んでいます。とくに今季はルクセンブルクもそうですが、サンマルコが独ダービーを制するなど、 2400mのビッグレースでは無類の強さを発揮するモンジュー系の後継として主役の座を射止めようとしています。
2番人気はアルピニスタというフランケル牝馬が占めています。昨年はたびたびの“ドイツ留学”で直後に凱旋門賞を制覇するトルカータータッソを撃破する大金星を含めてG1を3連勝とメキメキ力をつけ、今季はフランスとイギリスで連勝してバーイードG1・6連勝を追うG1・5連勝の快記録を更新中のアルピニスタがドッシリと腰を据えています。血統的には、母父エルナンドはニジンスキー系のステイヤーで持久力には自信満々ですから、父フランケル直伝のスピードとの掛け算で、いかにも堂々たる“凱旋門賞仕様”の配合を実現させています。以下は、これもようやく戦列復帰した昨年の英ダービー馬アダイヤーが3番手。愛チャンピオンSは直線で進路が窮屈になりルクセンブルクの3着に敗れたヴァデニは、父がガリレオ系ながらマイラーとして大活躍したチャーチルですが、底力に定評のある母父モンズーンのアシストもあり“スミヨン・マジック”が炸裂する場面があるかも。
そして5番手でやっと登場するのが昨年の覇者トルカータータッソと並んで日の丸軍団の総大将タイトルホルダーです。菊花賞、天皇賞(春)などマラソンカテゴリーの絶対王者ですが、ヨーロッパでは評価されにくいカテゴリーなのが災いしての低人気なのでしょうか?宝塚記念のレコード圧勝がもっと注目されて良いような気もするのですが、横山和生騎手の乾坤一擲(けんこんいってき)駆けを全力で応援したいと思います。若大将ドウデュースは前走内容がイマイチと受け取られて評価を下げています。剛力ディープポンドは昨年のトライアルの鮮やかな逃げ切りと見せ場もなかった本番の落差が大き過ぎて、馬券の買い手を惑わせているようです。老練ステイフーリッシュはドーヴィル大賞典がいかにもトライアルといった感じで力が抜けた良いレースでしたが、年齢的に大きな上積みを期待されるのは重荷かも。しかし日の丸勢には大きなアドバンテージもあります。それぞれが個性に忠実に自分のレースに徹するなら、直線に向いた残り500mの勝負どころでは、くつわを並べて先団を形成している可能性が十分にありそうだからです。もちろん勝負はゴールライン上で決します。そこに先頭で駆け込んでくれるのが一番ですが、少なくとも1頭でも2頭でも、最後の最後の争いに加わっていてほしいです。いい凱旋門賞になると良いですね。