2022.08.02

後半戦の楽しみは?

G1レースがスタートする4月下旬からの半年間をシーズンとしてひと括りにしているヨーロッパ風の競馬暦に従えば、シーズンの半分を消化して折り返し点を通過したところですね。ここまでをリーディングサイアーのランキング推移で振り返ってみると、定評のある実績馬たちが安定した成果を上げています。ランキング順に眺めると、ドバウィが1馬身、2馬身程度の差を保ってトップを走っています。開幕早々から、G1第1弾の英2000ギニーとロイヤルアスコットのセントジェームズパレスSをコロエバスが連勝、仏2000ギニーをモダンゲームズで制するなど、鋭いダッシュを利かせたゴドルフィン勢の貢献が大きいのは無論ですが、ゴドルフィン以外にも繁殖活動の範囲が広がっているのも目立っています。ゴドルフィンとは長年にわたって宿命のライバル関係にあるクールモアに、ドバウィ産駒が散見される近況で、先日はアイルランドの2歳重賞・G3・シルヴァーフラッシュSをエイダン・オブライエン厩舎のネヴァーエンディングストーリーが勝っています。ブックメーカー各社は彼女を来年のオークス有力馬にノミネートしました。今年のドバウィは先々まで楽しめそうです。

もともとモハメド殿下が寵愛したドバイミレニアムが1世代だけを遺して急逝した悲劇を乗り越えて、奇跡的に血を繋いだのがドバウィでした。ミレニアム(千年)の忘れ形見ともいうべきドバウィの種付け料は、現在25万ポンド≒4000万円。亡きディープインパクトに肩を並べ、世界一のガリレオを追う立場です。これまではゴドルフィンによって大事に遇され“半プライベートサイアー”として存在感を示してきましたが、ここまでクールモアなどオーナーの裾野が広がってくると、悲願のリーディングサイアー奪取も夢ではありません。

日本には初年度産駒の成功馬である英2000ギニーとジャックルマロワ賞のマクフィ、ドバイワールドCのモンテロッソなどが輸入されています。重賞はマクフィがオールワットワンス、モンテロッソがビリーバーのともにアイビスサマーダッシュの覇者だけと、いささか寂しい結果に終わっています。ガリレオもそうでしたが、ヨーロッパでの図抜けた実績に比べて日本適性が見劣りする傾向が見られます。今年から“芝ダート二刀流”のベンバトルがビッグレッドファームに繋養されていますが、不吉なジンクスを覆すことができるでしょうか?ドバウィも今年で20歳、種牡馬としては晩年を迎えています。ヨーロッパ種牡馬チャンピオンの夢を叶え、日本での飛躍を期待したいですね。

そのドバウィを追って、不滅の帝王ガリレオ、その半弟シーザスターズ、帝王後継の断然の一番手フランケル の3頭が一団となって食らいついているというのが欧州リーディング戦線の現状です。ガリレオ系はベストテン圏近辺にナサニエル、チャーチルなど中堅新鋭とり混ぜて多数を送り込んでいます。シーザスターズも大物輩出の気風は兄に負けていません。フランケルのG1馬出現頻度も恐るべきハイアベレージを誇っています。こうした従来の延長線上とも思える安定勢力が地力で押し切るのか?それとも意外な伏兵が秘めたるポテンシャルを爆発させて天上に駆け上るのか?日本もそうですが、ヨーロッパも次代チャンピオンの王冠をどの馬が戴冠するかの大河ドラマから目が離せません。