2022.06.22
ダートホースの価値
クラシックを頂点とするダート分野の 2歳、3歳戦番組体系の、中央・地方が一体化しての改革が発表されて、ダート競馬そのものやダートホースの価値を巡る議論が巻き起こりはじめています。セレクトセール、セレクションセールなど規模の大きい競り市も開催を間近に控えています。ともすれば“格下”的な偏見に悩まされてきたダートホースですが、その価値を見直す上でいい機会になったのではないでしょうか。一口に価値といっても、その物差しをどこに置くのかとか、誰が評価するのかとか、一筋縄では片づかない複雑で難しい問題が山積みされています。ひとつにはIFHA(国際競馬統轄機関連盟)が世界中のレースを集計して算出している「レーティング」があります。確かに大雑把な傾向は把握できるものの、一頭一頭のサラブレッド個々の価値基準としては粗っぽい気がしないでもありません。個々の馬が稼いだ獲得賞金額を価値の目安とする考え方もあります。
権威ある競馬専門メディアとして知られるイギリスの「レーシングポスト」がまとめた世界の獲得賞金ランキングを眺めてみると、歴代のチャンピオンにはオーストラリアの女傑ウィンクスが、牡馬を寄せ付けず威風堂々と君臨しています。7年前のオーストラリアンオークスで2着に敗れた以来、その後は引退までの丸々4年間、25戦25勝と一度も負けなかった不死鳥伝説が伝えられています。通算43戦37勝、うちG1レース25勝は歴代世界最多勝として記録され、その賞金総額は日本円に換算して22億円を遥かに超えます。
この輝かしい不滅の女王ウィンクスを別格とすれば、賞金王の世界ベストテンは、大きく二つのグループに分類されます。ひとつは賞金水準が飛び抜けて高い日本から、アーモンドアイ、ジェンティルドンナ、オルフェーヴル、キタサンブラックが名を連ねます。そしてもうひとつが、1着賞金1000万ドル≒13億円のサウジCを筆頭に、ドバイワールドC、ペガサスワールドCなど目の玉が飛び出るような高額賞金レースがラインナップされるダート分野ですね。これらのレースを勝ちまくったアロゲート、サンダースノー、ガンランナー、ミシェリフがランクインしています。凱旋門賞連覇のエネイブルが10位というのが、サスガ!と言うべきなのか?ちょっとモノ哀しく感じるのか?微妙なところですが、そもそも芝のレースとダートの競馬を同列に論じること自体に無理があるようにも思われます。
日本調教馬のダート分野における賞金ランキングは、ヴァーミリアンが歴代1位ですが、父エルコンドルパサーが早死し、自身も受精能力に問題があって早々と種牡馬引退したのは残念です。2位のホッコータルマエは、今年の2歳馬がスタートダッシュを決めて突っ走っています。3位のエスポワールシチーは地方リーディングを快走しており、父ゴールドアリュール、その最大のライバルだったサウスヴィグラスがともに亡き今は、ちょっと遅い春ですがチャンピオンサイアーの順番が巡ってきたようです。いずれにしろ今後は、ダートホースの価値に関する議論が深まり、いろいろな面で注目も高まっていくんでしょうね。それとともに競馬自体もますます面白くなっていく期待に胸が躍ります。