2022.06.09

新馬戦と配合技術の進歩

ひと足早くスタートした地方競馬を追い掛けて、先週からJRAも新馬戦の幕が開きました。2022年の一番星は、中京競馬場では新種牡馬サトノダイヤモンド産駒のダイヤモンドハンズ、東京競馬場ではモーリスのノッキングポイントがそれぞれ初陣を飾りました。ともに今の時期のデビュー戦向きの早熟性とは縁遠い血統です。いきなりからの仕上がり状態≒完成度を不安視されたフレッシュホースたちが、今年は案外と走っている印象ですね。この傾向は地方競馬にも現れていて、有馬記念など生粋のステイヤーとして活躍したゴールドアクターが早くも2勝を上げるなど、良い意味で期待を裏切るような活躍を見せています。この馬はモーリスと同じスクリーンヒーロー産駒、母方の良さを引き出す能力を秘めていたのでしょうか?

サトノダイヤモンドはディープインパクトの評判馬らしい気品あふれる馬体の持ち主でファンを魅了しましたが、良績は菊花賞、有馬記念と長距離に集中していたステイヤーでした。ダイヤモンドハンズは、父の母系に流れるアルゼンチン血統にアルゼンチン1000ギニー馬の母の血を重ねています。アルゼンチンやお隣のチリやウルグアイなどの南米競馬は、もともと2〜3歳戦が重視され、早い時期から完成度の高さが求められます。そのヒーロー&ヒロインは北米などにトレードされ、さらに大きな舞台へと階段を上ります。新馬戦のセンスの良い走りを見る限り、この配合は吉と出たようで、スケール感のあるフットワークに先々の楽しみが膨らみます。

モーリスはセール直後から即戦力がセールスポイントの2歳トレーニングセール出身で、素質だけで新馬戦を勝っていますが、本質は大器晩成タイプだったようで4歳時にようやく本格化しています。種牡馬としては、ピクシーナイトがG1スプリンターズSを快勝したり、シャトル先のオーストラリアでクラシック戦線を賑わせたりと上々の出足ですが、全体に使われながら成長していくタイプが多いようです。ノッキングポイントは母にチェッキーノ(父キングカメハメハ)を迎えています。フローラSを勝ち、オークス2着の一流馬ですが、全兄コディーノはG3札幌2歳S、G3東京スポーツ杯2歳Sを連勝し、不利のあったG1朝日杯フューチュリティSも2着と、いきなりハイレベルな完成度を見せつけました。皐月賞も3着と見事な走りで、近年屈指の超一流早熟馬だったと思います。ノッキングポイントの初陣勝利は、ノーザンファーム配合担当者の狙い通りだったと言えそうです。

一口に配合技術と言っても、育成技術や調教技術も含めて総合的に考えなければならないのでしょう。しかしいずれにしろ、父系の素晴らしさを受け継ぎ、母系の良さを引き出し、さらに相乗効果でプラスアルファを創り出す、そうした配合技術が急速に進んでいるのは間違いがないようです。それでも競馬の探求には、終わりというものがありませんから、次々と新しい課題が噴出してくるのでしょうが、その都度その都度に技術進歩の現在地を知っておきたいと思います。