2022.05.24

海外が近くなってきた

カラスの鳴かない日はあっても、海の向こうから日本つながりの競馬ニュースが舞い込まない日はない昨今です。カラスはちょっと大げさかもしれませんが、競馬の世界では日本と海外の距離がそれくらい縮まっています。もう普通になった海外遠征はもちろん、現役馬が海外に輸出されて移籍するケースも増えています。オーストラリアなど南半球にはシャトルされる種牡馬も多く、モーリスなどを筆頭に産駒の大活躍が伝えられることもしばしばです。また最近、ちょっとしたトレンドになっているのが、海外馬主というチャレンジ新戦略でしょうか?社台ファーム・照哉さん、ノーザンファーム・勝己さんの吉田兄弟お二人は、この試みに古くから積極的に打ち込んでいて、ヨーロッパのクラシックやG1レースを賑わしてきました。賞金の安いヨーロッパで馬を走らせるのは大変でしょうが、世界に通用する馬を創り出すにはまず世界を知ること、そんな熱く深い想いがそうさせるのでしょう。

近年はこうした先駆者を追うように、少なからぬオーナーが海外へ活動の場を広げています。世界的大馬主クールモアとパートナーシップで結ばれる松本俊廣さんは、「コンドウイサミ」「ヒジカタトシゾウ」など新撰組由来の馬をヨーロッパで走らせていますが、先週はアイルランドのリステッドで「オキタソウシ」というガリレオ産駒を長期休養から復帰させています。惜しくも2着に敗れましたが、ひと叩きした今度は持ち前の好素質を爆発させてくれるでしょう。ノースヒルズの前田幸治さんの所有馬ビリーヴインラヴがイギリスの重賞を勝っています。昨秋はフランスの牝馬長距離G1・ロワイヤリュー賞で短クビ差2着とG1制覇まであと一歩に迫っている馬です。今年は朗報が聞けそうですね。牝馬ですから、先々もお母さんとして長くファンを楽しませてくれるでしょう。

JRAの門が狭すぎるのか?夢を追い掛けて単身で海外へ雄飛する勇敢な若者も少なくありません。ノーザンダンサー・ニジンスキー親仔を生んだ現代競馬の聖地カナダで頑張っている木村和士さんは、昨年遂に彼の地のリーディングジョッキーに輝きました。アメリカからも騎乗依頼が舞い込むようになり、着々とワールドクラスへの階段を登っています。こうした若者がオーストラリア、ニュージーランドなど南半球も含めて世界中に散らばっており、語学の壁とか高いハードルと闘いながら頑張っている“近ごろの若者たち”は、本当に大したものだと舌を巻かされます。

日本から輸出された競走馬や種牡馬の活躍も目立ちます。この分野において我が国は、歴史的に“輸入超過国”で、赤字幅は想像を絶する天文学的レベルに達するでしょう。しかし、ディープインパクト産駒が当たり前に海外G1を勝つようになり、アグネスゴールドがブラジルで南米を代表する大種牡馬として威勢を誇るようになると、風見鶏も違った方角を模索するようになります。これも先週のお話ですが、イタリアに輸出されていたアルバートドックの仔たちが伊ダービーで大暴れしました。ディープインパクトの仔で競走馬として小倉大賞典や七夕賞などローカルG3を勝ちましたが、種牡馬入りの声が国内はどこからも掛からず、イタリアへ渡った“流浪の一流馬”です。しかし、初年度産駒から3頭もダービーに駒を進め、そのうちの1頭テンペスティがゴール寸前でクビだけ差されたものの2着に踏ん張り、他も5着と10着と悪くない成績でした。これなら今後は人気を集めそうな期待が持てます。次のビッグレースでは機会が許せば、かつてイタリアのリーディングジョッキーを張ったミルコ・デムーロさんに騎乗依頼があるとワクワクするのですが。