2022.04.27
新種牡馬一番星
馬産地競馬・門別で先週から幕を開けた2020年生まれのサラブレッドたちの競馬場デビューは、早々と南下し一昨日は地方競馬のメッカ・南関東でも、生涯一度だけのクラシックを目指す熱い真剣勝負が始まっています。一昨日の浦和の第1レース「ドリームチャレンジ」がそのレースで、5頭立てながら1番人気サムタイムアゴーと2番人気シェナクラウンが、スタートからゴールまで息を入れる間もなくビッシリ競り合い、初お目見えの若駒らしからぬ迫力満点の叩き合いに、いきなり朝イチから観客を興奮の渦に巻き込みました。この世代もファンを存分に満足させてくれそうです。
激闘をアタマ差しのぎ切ったサクタイムアゴーは、新種牡馬マクマホンの産駒で、これが今年デビューのフレッシュサイアーにとっての初勝利、嬉しくも誇らしい一番星に輝きました。「トーセン」の冠名でお馴染みの大オーナー島川隆哉さんが、イタリアで走らせ同地のダービーを制し、海外遠征のカタールダービーも勝った期待の新進サイアーです。イタリア育ちと言えば、東京コースの鬼として強烈な末脚のキレで一世を風靡したトニービンが懐かしく思い出されます。凱旋門賞馬の勲章を下げて鳴り物入りで来日したトニービンを例に出すのは、ちょっと荷が重い気もしますが、島川オーナーが“三顧の礼”を尽くして遇して来た想いの深さに惹かれます。
セレクトセールなどを通じて高額で購買した目もくらむような良血牝馬たちを、オーナーブリーダー牧場として創設したエスティファームに繋養し、彼女たちをこぞって“マクマホンの花嫁”として交配を続けています。この名牝たちを分散させないために、オーストラリアでG1を2勝した快速ブレイブスマッシュなどを輩出のトーセンファントムや地方重賞馬をコンスタントに送り出しているトーセンブライトなど実績のある種牡馬を引退させ、マクマホン一頭に絞り込んでチャレンジさせているのは並み大抵の熱意ではありません。ここまで行くと、もはや“三顧の礼”と言って良いでしょう。
エスティファームのプライベート種牡馬は、もともと登録頭数が少ないこともあってリーディング上位を賑わせるなどの話題性はありませんが、昨年デビューしたヴァンキッシュランがJRA2歳リーディングサイアーのアーニングインデックス部門で堂々の1位に輝いています。このランキングは、出走全馬の平均獲得賞金を「1」として、各種牡馬毎の平均獲得賞金の指数を算出して順位づけされます。この指数が「1」以上なら優秀、以下ならイマイチと評価されます。この分野は海外繋養の良血種牡馬がたいていは優勢なのですが、ヴァンキッシュランは「指数6.70」と抜きん出て、連勝馬デュガで躍進したプラティカルジョークの「指数5.59」、3歳時にはG2ニュージーランドトロフィーを勝つジャングロを出したモアザンレディの「指数5.19」を寄せ付けずチャンピオンの座をもぎ取っています。こうしたエピソードの数々も含めて、新馬戦には面白さがテンコ盛りです。今年もいろんな楽しみが広がっていきそうです。