2022.04.25

新たなるディケイド

先週21日、エリザベス女王が96歳の誕生日を迎えられました。飛び抜けた史上最高齢の現役国王だそうです。いつまでも矍鑠(かくしゃく)とイギリス統合の象徴として国民の尊崇と敬愛を集める姿に共感の輪が広がります。女王の誕生日から10日もすれば、ニューマーケット競馬場1600mを舞台に、30日の土曜日は2000ギニー、翌1日の日曜日が1000ギニーと今シーズンの開幕を告げるクラシックレースがスタートします。

今年はエプソムのダービーデーにもお出かけの予定で、エプソムのエントランスでは女王の勝負服を着用してレースに臨んだ40人の引退&現役ジョッキーがお出迎えするそうです。現時点で女王所有のリーチフォーザムーンというシーザスターズ産駒が、悲願のダービー馬オーナーに手が届きそうな2番人気に支持されています。他にエデュケーターというディープインパクト産駒も登録を残しており、残されたダンテSなどのトライアルの結果次第では、女王が愛したハイクレアの子孫で最高のドラマを目撃する可能性が残されています。ご承知のようにハイクレアは英1000ギニーと仏オークスのクラシック二冠を女王に捧げた名牝で、ディープインパクトの曽祖母となり、日本の活躍種牡馬となった凱旋門賞馬バゴの父ナシュワンの祖母に当たります。

ダービーが幕を閉じれば、2週間足らずでロイヤルアスコットが華やかに幕を上げます。女王が熱心にリーダーシップを執れる王立競馬であり、時代とともに華麗な変化を成し遂げてきた“競馬の故郷”のような大切なカーニバルです。さまざまな変化を感じ取るホースマンの時間感覚は「ディケイド」という10年一括りの単位に集約されることが多いようです。たとえば「ニジンスキー・ミルリーフの両雄拮抗の70年代」とか「80年代最強馬ダンシングブレーヴ」などで時代の傾向と特徴をまとめ上げます。ロイヤルアスコットの歴史も、このディケイドによって大きく区切られてきました。エリザベス女王の即位50周年を祝ってロイヤルアスコットのメインレース「ゴールデンジュビリーS」が、それまでの「コーク&オラリーS」を改称して誕生します。結婚50周年を「金婚式」と呼ぶ慣わしを踏襲したネーミングだったようです。

以後、節目のディケイドごとに、60周年を祝う「ダイヤモンドジュビリーS」に発展し、今年からの10年間は「プラチナジュビリーS」と新たな名称で70周年祝祭へとさらなる進化を遂げて行われることになります。2022年は新しい時代の幕開けになると言っても良いでしょう。この記念すべき祝祭に、コロナ禍を乗り越えて日本からも多くのサラブレッドが参戦意志を表明しています。イギリス連邦の仲間であるオーストラリアの俊英たちも参加に前向きですし、かなりレベルの高いカーニバルになりそうです。果たして日本ホースマンが、初めてアスコットの地に勝利の蹄跡を刻み込み、女王陛下から記念のカップを受け取ることができるでしょうか。目の離せない本格的な競馬シーズンが始まります。楽しみしかありませんね。