2022.04.22
揃い踏みへの期待
今週はオークストライアルのG2・フローラS。2枚のオークス優先出走権チケットを懸けて18騎のヒロインたちが真剣勝負に臨みます。レッド軍団からはルージュエヴァイユとルージュスティリア、いずれも有力視されている両馬がゲートインします。今年はクラシック出走のボーダーラインが低めになっており、桜花賞、皐月賞ともに1勝馬が本番に滑り込んでいます。現状では2勝馬のエヴァイユは、ほぼ安全圏と想定されています。そうは言っても、桜花賞よりはオークス、皐月賞よりはダービーと後に行くほどボーダーが上がり、ゲートインへのハードルが高く厳しいものになっていきますから、ここはワンツーフィニッシュの揃い踏みを決めてもらいましょう。滅多にあることじゃありませんが、それだけの夢を見させてくれる優駿ですから。
ルージュエヴァイユの母ナッシングバットドリームズは、世界中で大きなムーブメントを巻き起こしたフランケル初年度産駒の中でも評判が高く、動向が注目されました。それというのも、彼女の母デインドリームは社台ファームの吉田照哉さんに購買された直後の凱旋門賞をレコードで圧勝したシンデレラホースだったからです。彼女は不運にも出走に至らず、未完で才能を眠らせたまま引退して日本に渡ります。そして馬名ナッシングバットドリームズ(夢しかない!)通りにエヴァイユ(覚醒)と名付けられた牝馬を産みます。デビューから連勝を続けているのは大したものですが、持って生まれた天賦の才能のまだ半分も覚醒させていない印象があります。
ルージュスティリアの器の大きさも相当なものだと思っています。前走のG2・チューリップ賞は、一瞬世界中の時計が止まったかと錯覚するほどの大出遅れ、しかも12秒3だった1ハロン目から10秒7と急加速した2ハロン目でエンジンをふかして大差を詰めに追いかけたのですから、一体どれだけの脚を使ったことか!これでは直線で歩いてしまうのも仕方なしか?と諦めかけていたのですが、脚が上がるどころか衰えない末脚をグイグイ伸ばし、終わってみれば直線大外を一気に差し切ったナミュールの33秒9の同タイムの上がり最速。直線で馬群に包囲されて行き場をなくなさなければ…そんな想いがフツフツと湧いてくるゴール板でした。デビュー戦の新潟でも、長い直線の入口過ぎで早々と先頭に立ち、残り500mで追いすがるスターズオンアースを振り切ってゴールしています。
考えてみれば、後の桜花賞馬を寄せ付けなかったパフォーマンスは並大抵の才能ではありません。良い脚を鋭く長く使える非凡なステイヤー資質はオークスでこそ!と信じさせる説得力に富んでいました。もう楽しみしかありません。東京競馬場は開幕週で、通称“TOKYOハイウェー”と呼ばれる高速馬場が勝敗の行方を左右しそうですが、外めの13番枠を引いたスティリアは自在に振る舞える本来の競馬ができそうですね。最内枠1番ゲートから発進するエヴァイユは、スタートが上手とは言えない馬だけに難しい競馬を強いられそうですが、この試練を乗り越えれば、さらに大きなナッシングバットドリームズ(夢しかない)未来が開けるはずです。