2022.04.21

日本一早い新馬戦

大地が目覚め、雪が溶け、草が萌え、馬がメキメキ良くなる季節がはじまると、日本で一番早い新馬戦のファンファーレが響きます。先週14日に新シーズンが開幕した馬産地・門別競馬場で、今年は第2週の昨20日にスーパーフレッシュチャレンジの第1戦がスタートしました。1着300万円と地方競馬の新馬戦としては最高クラスの賞金が提供され、2歳戦の番組体系もきめ細かに整備されて、馬たちが慣れ親しんだ牧場を外厩替わりに使える馬産地競馬ならではの環境も大きな魅力です。良馬が集まらない理由が見当たりません。

2022年の新馬勝ち一番乗りは、田中淳司厩舎の牡馬ポリゴンウェイヴでした。新馬の仕上げに熟達した伯楽が高度な技術を競う門別にあって一、ニを争う辣(らつ)腕を誇り、今年の東京ダービーで本命を期待されるシャルフジンなど全国区の優秀馬を各地に送り出し続けている名門厩舎です。能検(能力検査)の動きが抜群で圧倒的な人気に支持されたポリゴンウェイヴですが、この日は勝つには勝ったものの試験と本番は別物のようで、伏兵にビッシリ食い下がられ、いきなり勝負の厳しさの洗礼を浴びる試練のデビューとなりました。ただ、追われてタフに伸びるスタミナと勝負根性の確かさは確認できました。距離延びる今後に素質を開花させそうです。

ポリゴンウェイヴを送り込んだ父ヘニーヒューズは、世界的に広く評価されているヘネシー系らしく、仕上がり早く安定した走りが牧場関係者からも信頼されて、種付け料も今では日高No.1の500万円に達しています。芝G1の朝日杯フューチュリティSとダートG3のレパードSの双方を勝ったアジアエクスプレスのような“二刀流”を武器にする産駒も出す器用さも魅力です。しかしここまで上昇すると、小規模牧場さんには勇気のいる決断になりますから、産駒数も多いとは言えず、コストパフォーマンスを考えると活躍の場は中央が中心になります。地方リーディングサイアーの王座を7年連続で独占して来た“砂のディープインパクト”サウスヴィグラスが亡くなり、後継を期待されいますがイマイチ順位が伸び悩んでいる原因もここらにありそうです。

芝のディープインパクトとダートのサウスヴィグラスと、今や“絶対王者”亡き後の後継争いが熱を帯びて来ました。皐月賞で新種牡馬ドレフォンがクローズアップされているのも、そんな風潮と無縁ではないでしょう。ポテンシャルの豊かさと実際の結果が噛み合わないモドカシさを感じさせるヘニーヒューズですが、今年19歳と種牡馬としても晩年の域に入りました。2歳時から6歳時までG1を11勝とトップレベルでコンスタントに走り、5年間の競走生活でアメリカ最高峰の勲章として有名なエクリプス賞には、故障で満足に走れなかった5歳時を除いて4度もチャンピオンホースに輝いた名ヒロイン・ビホルダーの後を追うようなヒーローがそろそろ現れてほしいものです。そんな気持ちも手伝って、今年は中央も地方も海外もなく、新馬戦ロードから目が離せません。