2022.04.18

競馬はもっと面白くなる!

広がる初夏の空よりも大きく感じられる可能性と夢を競う生涯一度のクラシックも良いものですが、長年の激闘で磨き抜かれ研ぎ澄まされた海よりも深くなった底力の鬩(せめ)ぎ合いに息を呑む歴戦の雄の死力を尽くす真剣勝負も趣きが深いものです。中山競馬場を舞台に行われたクラシック三冠の第一関門であるG1皐月賞は、素質の高さを評価されて人気上位に支持されたサラブレッドたちが力走して、ほぼファンの期待通りに上位入線を果たしました。スタートで躓いた馬がいたり、週中の雨で馬場の内外で勝負の行方を決するアドバンテージ(優位性)に少し差が出たりしたようですが、まずはフェアで気持ちの良いレースだったと思います。

一方、ほぼ同時刻に阪神競馬場で行われたダート重賞のG3アンタレスSには、中央・地方の壁なく日本競馬の1年を締めくくる大一番・G1東京大賞典4連覇というトテツモない大偉業を達成しているオメガパフュームが出走し、下級条件から連勝を重ねて来たトビッキリ粋の良い“上がり馬”バーデンヴァイラーとグロリアムンディを迎え撃つ興味深い戦いになりました。その他にも重賞戦線で常に勝ち負けしてきたケイアイパープル、ウェスタールンド、オーヴェルニュといった実力派が顔を揃え、芝路線から転進して来たカデナといった不気味な曲者も控えています。G3とは思えないハイレベルなファイトが期待できそうです。

種牡馬入りを寸前まで検討されながら現役続行を決断したオメガパフュームが、レース前までは久々に加えて他馬より2㌔以上も重い重量を背負って実力通りに動けるか?とファンの心は掻き乱されていたようです。案の定?スタートして行き脚がつかないのかパフュームの白い馬体は後方に置かれたまま、大きな動きがないまま淡々とレースは流れます。バーデンとグロリアのチャレンジャー両馬は気分良く好位を追走、とくにグロリアの手応えは素晴らしく直線に向いて並走して来たバーデンを競り落とし先頭に立つと重賞初制覇のゴールに真一文字に疾駆します。しかしようやくエンジンがかかったパフュームが、とても届かないと思える位置から、3㌔の重量差もどこ吹く風と一完歩一完歩グィグィッと差を詰め、ゴールが近づくにつれ力強さを増して来るように見えます。東京大賞典4連覇の歴史遺産クラスの大偉業は伊達ではありませんでした。素晴らしい馬です。グロリアムンディにとっては大きな壁だったでしょうが、この経験が先々は大輪を咲かせるかけがえのない糧となることでしょう。

フレッシュなクラシック同日に、こうした重厚な一戦を味わえる番組編成に深い感謝と心からの敬意を表します。海外ではクラシックなどビッグレース開催日に複数のG1レースを併催することが普通になっています。多くのファンに関心を深めてもらうために欠かせない心配りです。競馬場へ出かけるファンには何よりの“おもてなし”でしょう。日本では馬券売上などの経営上の問題で難しいようですが、昨日の皐月賞とアンタレスSのような組み合わせなら無理なく実現できそうです。座って出馬投票を待つのではなく、有力馬の招聘など番組編成努力は欠かせないでしょうが、競馬の面白さをさらに増大させるためには惜しめない手間暇でしょう。競馬はもっと面白くなる!そんなことを考えさせられた日曜日でした。