2022.04.14

欧州クラシックの足音

桜花賞の次は皐月賞、クラシックたけなわの昨今ですが、ヨーロッパでは障害シーズンが千秋楽のオオトリ風の盛り上がりに湧いています。そしてようやくクラシックへ向けた平地シーズンが活発に動きはじめました。

ここ2年ほどはコロナ禍に翻弄され、競馬も思いがけず不本意な迷走を強いられましたが、そろそろ本来の姿に立ち戻れないものでしょうか?競馬の母国・イギリスでは、今年はエリザベス女王の即位70周年と記念すべきメモリアルイヤーに当たるとあって、王立競馬ロイヤルアスコットを中心に準備に余念がありません。ご存じのように、ロイヤルアスコットは人生の節目とも言うべき“金婚式”に相当する即位50周年には最終日のメインレースを「ゴールデンジュビリーS」と改名し、“ダイヤモンド婚式”の60周年から10年間は「ダイヤモンドジュビリーS」と呼んできました。

そして今年からは、さらに高貴で深遠な「プラチナジュビリーS」ということになります。イギリス本国はもちろん、日ごろから交流が盛んなアイルランドやフランスなどヨーロッパの競馬大国、海外に積極的に活躍の場を広げている日本でも“ロイヤルアスコット熱”が高まっています。「君臨すれども統治せず」の理念の下に女王が長として精神的支柱を勤める英連邦王国(コモンウェルス・レルム)に属するオーストラリアやカナダなども出走意欲を表明している馬主・厩舎は少ないようで、大陸間を人馬が自由に行き来することで、長く厳しかったコロナとの戦いに終結宣言を打てれば素晴らしいのですが。

ロイヤルアスコットについては動きがある都度お伝えしたいと考えていますが、平地シーズン初頭いきなりビッグなニュースがもたらされました。女王は、今年のダービーで上位に評価されるリーチフォーザムーンというシーザスターズ産駒をお持ちですが、先日のニューマーケットでエデュケーターという馬が始動戦を飾り、ダービー戦線に名乗りを上げました。ご存じの方も多いでしょうが、所有繁殖牝馬をわざわざ日本に送り込んでディープインパクトに種付けして生まれた英日合作サラブレッドです。ディープの曽祖母ハイクレアが女王にとって特別な一頭であったことを思えば、この里帰りは感慨深いものだったでしょうね。

エデュケーターは昨年最終戦での初勝利がクビ差、今年初戦はハナ差で連勝しています。派手さこそありませんが、とにかく気丈で勝負強いのが何よりです。昨日のニューマーケットでは、クラシックの大本命ネイティヴトレイルがG3クレイヴンSで本番前の試走をケタ違いの瞬発力で圧勝しています。これで5戦5勝と向かうところ敵なし!昨年も英ダービーとキングジョージ6世&クイーンエリザベスSをアダイヤー、愛ダービーとパリ大賞・英セントレジャーをハリケーンレーンと2頭のフランケル産駒で総ナメにして怒濤の進撃を続けるゴドルフィンの所有馬です。ちょっと死角らしい死角が見当たりません。敢えて課題を上げれば経験のない道悪競馬でこの脚が使えるか?でもこれも杞憂でしょうね。いずれにせよ今年のヨーロッパは、いつもに増して一味も二味もグレードアップした面白い競馬が見られそうです。