2022.04.08

大阪杯の謎【後篇】

誰もが認める“現役最強馬”エフフォーリアのG1・大阪杯での思いがけない敗戦は、大変なショックでした。体調面から、レースの流れから、更には血統面からと様々な角度で敗因分析が掘り下げられているようですが、ひとかけらの想像もできなかった大敗はまだ信じられない気持ちです。彼がどれくらい強い馬だったかをいえば、走ったレースのレベルの高低から類推してみます。レースレベルを数値化して分かりやすくする試みに「レースレーティング」という手法が試みられています。ロンジン社のスポサードによりIFHA(国際競馬統轄機関連盟)が集計・分析する「ワールドトップ100・G1レース」というランキングです。世界の国々のG1レースの1〜4着馬のレーティングの平均値の優劣によって、レースレベルの目安として世界中のG1レースがランキングされています。

エフフォーリアが昨年秋に、無敗のまま三冠を制した天才馬コントレイル、スプリントとマイルの二階級で手にした6つのG1に中距離王の勲章を加えた三階級制覇に燃える女傑グランアレグリアを引き連れてゴールした昨年の天皇賞(秋)のレースレーティングは、123.00と高い評価を受けています。どれくらいの評価かといえば、世界中のG1レースにあって、凱旋門賞・ブリーダーズカップクラシック・キングジョージ6世&クイーンエリザベスSに続いて世界3位にランクされました。距離2000mクラスのレースでは世界一ですから、中距離カテゴリーではワールドチャンピオンに君臨したと言うこともできそうです。ちなみに、天皇賞(秋)から連勝した有馬記念もレースレーティング122.00ながら世界5位にランクされましたから、エフフォーリアの強さはワールドワイドレベルに達したのかもしれません。

その“世界レベル”のサラブレッドを敗北に追いやった様々な要因のひとつに、勝者のレベルの高さも加えなければならないかもしれません。晴れて大阪杯馬となったポタジェは、派手さはありませんがハイレベルへの階段を、一歩また一歩と着実に上ってきた馬です。元を正せば超良血馬!半姉ルージュバックは少し歯車が噛み合わない不運もあってG1は未勝利に終わりましたが、重賞4勝の勲章すべてが牡馬を相手に勝ち獲ったもので、秘めるポテンシャルの高さは優に一流馬の領域に達していたと考えられます。立て直されて心機一転に燃えるエフフォーリアともども、ワールドクラスの活躍を期待したくなります。

昨秋のブリーダーズカップシリーズ、暮れの香港国際競走、今年は年明けからサウジアラビア、ドバイと日本調教馬の快進撃が続きます。ただし夢のようなこの現象は、世界中がコロナ禍に見舞われたここ数年、その影響をモロに浴びた国々に比べれば、日本はJRAなど運営統括組織やホースマンの皆さんの真摯な努力もあって、四苦八苦しながらも競馬の施行自体は何とかやり遂げることができました。このアドバンテージは大きかったと思います。これからコロナ禍の忌まわしい影響が徐々に軽減されるにつれて競馬も日常を取り戻し、日本もそうですが世界の国々のレースレベルは間違いなくグンと上昇軌道に乗ってきます。ライバルたちの復調に負けず劣らず、エフフォーリアやポタジェを旗頭とする日本馬が健在をアピールできるのか、真価を問われる季節は間近に迫っています。