2022.04.06

大阪杯の謎【中篇】

エピファネイアを源として発する血脈は、サラブレッドの花道であるクラシックロードを経験したのは2世代だけですが、ご承知のようにデアリングタクトが牝馬三冠を制圧し、皐月賞を勝ったエフフォーリアはダービーでもドバイシーマクラシックで世界に羽ばたいたシャフリヤールと死闘を演じてハナ差の2着、アリストテレスとオーソクレースも菊花賞で2年連続で2着に踏ん張っていますから、クラシック通算4勝2着3回の素晴らしい成績を残しています。

これがどれくらい飛び抜けて優秀な記録かと言えば、最初の2世代のクラシック勝利に限れば、競馬の長い歴史を紐解いても“神”種牡馬サンデーサイレンスの名にたどり着くほど大変な難事になります。彼は皐月賞をジェニュインとイシノサンデーで、ダービーはタヤスツヨシ、オークスはダンスパートナー、菊花賞ダンスインザダークと通算5勝、加えてバブルガムフェローが3歳時に天皇賞(秋)を制覇したのはエフフォーリアのエピファネイアと同様です。そして後継馬である“神童”ディープインパクトもマルセリーナの桜花賞を皮切りに、牝馬三冠のジェンティルドンナ、ダービーのディープブリランテで通算5勝、こちらはリアルインパクトが3歳時に安田記念で大穴を開けたのが、後に世界的マイラー種牡馬として名を馳せるディープらしいですね。「栴檀(せんだん)は双葉より芳(かんば)し」と、高貴な芳香で知られる白檀(びゃくだん)は芽のうちから香気を漂わせるものだという故事どおりです。

この偉大な親仔サイアーは、日本の競馬史に“クラシック血統”というカテゴリーを確立しました。3歳春にサラブレッドとして完成形に近づき、クラシックを通じてその価値を高めるという欧米流のライフスタイルを定着させたのです。この功績の大きさは、例えようがないほど傑出したものです。サンデーサイレンスを通じて、ディープインパクトがヨーロッパなどでクラシック馬を輩出したり、同じくSSの血を引くアグネスカミカゼが南米のチャピオンロードを席巻したり、つい先日もオーストラリアでモーリス産駒ヒトツがクラシック戦線で3つ目のタイトルに輝きました。こうした快挙は、クラシックを中心に回って行く競馬観という価値基準が同じでないと成立しません。

エピファネイアは、その母シーザリオからスペシャルウィークを通じてサンデーサイレンスへと遡り、ここまで成功した産駒のほとんどがサンデーサイレンス4×3のクロスを抱えています。その配合コンセプトはサンデーサイレンス系に色濃く伝わる“クラシック適性”の獲得にあるのは間違いがありません。“クラシック血統”は、世に言う“早熟血統”とは似て非なるものではないでしょうか?たまたまデアリングタクトが脚部不安に苦しみ、オーソクレースやエフフォーリアの4歳緒戦が不本意な内容に終わったからと言って、早熟のレッテルを貼り付けるのは早計かもしれません。明日はそのあたりを考えてみます。