2022.03.28

日本馬が強いワケ

オリンピック風に言えば「金メダル5個・銀1個・銅3個の快挙!」ということになります。ドバイワールドカップデーの嬉しいニュースの背景には、日本馬の順調な成長を感じさせて頼もしい限りです。シーマクラシックの直線半ばドンピシャのタイミングで抜け出すと、大外から強襲する大器ユビアーを計ったように封じ込んだシャフリヤールのクリスチャン・デムーロ騎手が馬上インタビューに答えて「日本は種牡馬からして並外れた才能群をラインナップしており、生産者や厩舎関係者などさまざまな分野で馬に携わるホースマンも飛び抜けて勤勉で優秀だ。日本馬が強いのは偶然じゃない」と言い切っていました。実兄ミルコと同様に、先々は日本でジョッキー稼業を続けたいと熱望する俊英クリスチャンだけに、丁寧な観察と鋭い分析には唸らさせられます。

それに付け加えるなら開催運営に携わる競馬統括機関の皆さんの存在も心強いものがあります。世界を覆い尽くしたコロナ禍で一昨年はドバイワールドカップデーが中止され、ヨーロッパ・アメリカはじめ主要国のクラシックや重要G1レースは軒並み延期されるなど、サラブレッドたちが順調に本来の力通りに走ることが難しい時期が長く続きました。そうした中で無観客開催こそ避けられませんでしたが、レーシングカレンダーに忠実に競馬の施行を成し遂げてきたJRAなど日本の競馬運営関係者の献身的な努力は並大抵ではなかったと感心します。曲がりなりにもレーシングカレンダーを遵守できたのは、世界の競馬先進諸国では唯一日本だけかもしれません。競馬開催にとってもっとも大切な普遍性・継続性という“永遠の本質”を守りながら、“強い馬づくり”に休みなく取り組めたのも、彼らの貢献が小さくない、とシミジミ実感します。

一昨年、昨年と香港最高峰のビッグレース香港カップを連続で日本馬ワントゥーフィニッシュを決めたのを皮切りに、昨年はアメリカ最高の競馬の祭典「ブリーダーズカップ」で遂に頂点を極められたのも、今年に入ってサウジアラビアでファンの度肝を抜く快進撃を見せ、ドバイの春は世界を唖然とさせました。これも彼ら競馬統括機関のリーダーシップが果たした役割は小さくありません。しかし少し時間はかかるのでしょうが、いずれ欧米諸国を筆頭に世界の国々の競馬は本来の姿を取り戻して来ます。そう簡単に勝たせてもらえなくなるでしょう。課題も少なからず明らかにされつつあります。

日本馬の中距離での強さには定評がありますが、短距離やダートでは勝つにも大変な現状です。ドバイではレッドルゼルがゴールデンシャヒーン2年連続2着と気を吐いてくれましたが、道はまだ半ばです。社台グループを中心に努力が重ねられて来ましたが、海外ではリーディングサイアー級の大物が日本では結果を残せないという苦い経験も少なからず味合わされました。ようやく最近、BCスプリントの王者ドレフォンを導入して、これは成功のメドが立ったようです。ゴールデンシャヒーン連覇の猛者マインドユアビスケッツの産駒が今年の明け2歳世代から登場します。ドレフォンに負けない活躍を期待したいものです。世界の王座を奪い取るより、守り抜くことの方が何倍も大変でしょうから。