2022.03.24
王者は王者から
8つのカテゴリーのチャンピオンシップを5つのG1と3つのG2レースで1日のうちに争うドバイワールドカップデー。8レース合計で賞金総額2950万ドル≒35億円余と世界でもっとも価値の高い1日となります。この日の価値をさらに盛り上げるために、今年から「ドバイブリーズアップセール」が現地23日に併催されました。会場のメイダン競馬場では、腕利きのコンサイナーが世界中から発掘し磨き上げたトビキリの2歳馬が上場され、モハメド殿下直々に立ち会いの上、世界第一級のホースマンたちが「明日の王者」を競り合いました。
最高価格をつけたのはカーリン牡駒で、61万9808ユーロ≒8243万円余で地元ドバイの馬主モハメド・アル・スブシさんが落札しています。ドバイゴールデンシャヒーンでレッドルゼルのライバルの1頭に上げられているイースタンワールドのオーナーさんですね。この馬は史上唯一のドバイワールドC連覇を達成したサンダースノーの半弟というエリートです。サンダースノーは現在はダーレージャパンにスタッドインして、王者の矜持と血脈を注ぎ込んだ後継ぎを東アジアの最果ての地から熱砂の中東へ送り出そうとしています。
カーリンはナドアルシバ時代の08年にワールドCで8馬身近いブッチギリ劇を演じたスーパーホースで、北米でも安定して上級馬を輩出するチャンピオンサイアーの1頭です。ダート競馬のメッカ北米の生まれ育ちというのも大きなポイントなのでしょうが、この馬に白羽の矢が立てられたのは、もっと壮大なコンセプトが秘められているようにも思います。「ダービー馬はダービー馬から」と古来有名な諺が伝えられていますが、「ドバイの王者はドバイの王者から」という強い思いがモハメド殿下の胸に宿っているのでしょうか?これからも“ドバイ王者”を次々と生み出すセールとして、さらに磨き上げられていくのでしょうね。
2番目の高額馬は日本人オーナーが落札しています。ビッグレッドファームの岡田紘和さんがフランケル牡駒に52万638ユーロ≒6924万円余の値を付けました。岡田さんの胸底には、もう40年近く遡る亡父繁幸さんのグランパズドリーム(おじいちゃんの夢)で惜しくも果たせなかったダービー制覇の夢が燃え盛っているのでしょう。フランケルはご承知のように、昨年の欧州リーディングサイアーに輝き今は亡きガリレオの王座を踏襲、世界中の有力ホースマンからのオファーが絶えないチャンピオン種牡馬です。メイダンのみにとどまらず世界の競馬場でチャンピオンホースを降臨させる野望の象徴でもあるのでしょうか?スケールの大きな構想で、いずれにしろ楽しみでなりません。