2022.03.10

開かれた競馬

香港の春を盛り上げるチャンピオンズデーが、今年は地元馬限定で開催されることになりました。ロックダウンも検討されるほどの緊急事態に直面するコロナ対策だそうで、残念ですが仕方ありません。一日も早く感染拡大に歯止めがかかり、平穏な日常が回復することを祈るばかりです。

チャンピオンズデーは年末のインターナショナルデーと並んで、香港競馬の確かな存在感を広く世界に向けて発信するビッグイベントです。もともと競馬の母国イギリスと切っても切れない絆で結ばれ、馬産がないためヨーロッパやオセアニアなどからの競走馬輸入も盛んで、世界との交流の歴史は一朝一夕の話ではありません。こうした背景から暮れは4つ、春は3つのG1が遠征コスト不要の招待レースとして挙行され、賞金も高額なことから日本はもちろん、ヨーロッパなどからも錚々たる一流馬が参集します。

それらのG1レースはロンジン社がスポンサードする知名度も手伝って、いずれも国際的な評価が高く、そのレーティングもトップクラスを競うほどです。現在の香港競馬は、世界も驚く高度成長を実現しています。JRAは今年からジャパンCと有馬記念の賞金を1着4億円と大幅にアップしますが、その心は、香港に負けないように魅力を高めて競争力を強化し、日本馬の流出や海外馬の招聘に役立てようという戦略です。香港競馬は、日本競馬にとって深い友好関係にあるのと同時に手強いライバルとなっています。その強みは、日本以上に世界交流が進んでおり、世界に大きく開かれていることでしょう。

日本では少し前までは、競馬社会は閉鎖的だと言われて来ました。海外遠征や逆に外国馬の来日なども、必ずしも活発な交流が行われていたわけではなく、国内でも中央と地方の間には高く厚い壁が聳え立っていました。しかしこうしたアンシャンレジーム(旧体制)も先達の努力により少しずつ克服され、昨今ではかなり風通しの良い業界になってきました。ネット馬券の後押しによる好況もあって、地方競馬の賞金ベースが向上し、出走機会を求めて上級馬の交流が活発化し、それが競馬人気自体を押し上げる好循環が生まれています。昨日の大井重賞「フジノウェーブ記念」で2着と能力の高さを証明したレッドフレイもそんな一頭。体質の弱さと除外ラッシュの二重苦で使いたいレースに使えなかった馬が、見違えるほど生き生きと走れるようになりました。これも“開かれた競馬”あってこその賜物と感謝の思いが溢れます。