2022.02.21

アメリカの夢・日本の誇り

今年最初のG1レース、東京競馬場のフェブラリーSは折りからの寒気による降雪や降雨で湿った馬場状態となり、まったく前が止まらない超スピード競馬となりました。この馬場では1番人気に支持されたレッドルゼルも残念ながら手の施しようがなく、前に行けて終いも確かなカフェファラオが3番手から力強く抜け出しました。連覇はコパノリッキーに続く史上2頭目の金字塔ですが、リッキーが最初の14年は単勝2万7210円のドンジリ人気でノーマークで先行抜け出した超大穴!三連単も2番人気ホッコータルマエ、1番人気ベルシャザールとの組み合わせだったにも関わらず“夢の100万馬券”にあと一歩の94万9120円と競馬ファンをザワつかせています。しかし次走Jpn1かしわ記念を連勝したのを皮切りに、最終的には交流を含むG1級11勝の日本最高記録に到達した歴史的名馬です。翌年のフェブラリーSで単勝210円の圧倒的人気に支持されるのも当然でした。この稀代の個性派キャラクターに対して、カフェファラオのそれは昨年は1番人気、今年も2番人気と常に大きな注目を浴びての堂々たるパフォーマンスでした。桧舞台の真ん中で華麗に駆ける先行タイプの正統派にとって、人気を背負う重圧をはねのけての連覇には大きな価値がありそうです。

父アメリカンファラオは、ご存じの通り競馬大国アメリカで37年ぶりに生まれた待望の三冠馬であり、さらに世代の壁を難なく超えて最高峰BCクラシック制圧を手土産にクールモアで種牡馬入りしたスーパーホースとして名を轟かせています。初年度から20万ドル≒2200万円余の破格の種付料で世界中から名牝を花嫁に迎えて、その産駒たちはアメリカ本国はもちろん、ヨーロッパ、日本などの競馬先進国に送り込まれています。どんな傑出した華やかなパフォーマンスを演じてくれるのか?世界中が固唾(かたず)を飲んで見守りました。

しかしスーパーホースにとってもスーパーサイアーへの道は一筋縄で進撃できるほど簡単ではなかったようです。本国ではフォーホイールドライヴが芝のBCジュベナイルターフスプリントを勝ちますがG1勝利にはなかなか手が届きません。結局、世界で最初にG1級レースを制したのは日本のダノンファラオによるJpn1ジャパンダートダービーでした。ヨーロッパではクールモアの世界拠点エイダン・オブライエン厩舎に入った2世代目のヴァンゴッホがフランス遠征でG1クリテリウムアンテルナシオンを勝ちますが、今のところ日本以外でアメリカンファラオ代表産駒と胸を張れるような存在は輩出されていません。

世界中を見渡しても、フェブラリーS連覇のカフェファラオが文句なしに頂上に君臨していると言えそうです。アメリカンファラオの日本適性が群を抜いているのは有名です。前述フォーホイールドライヴやヴァンゴッホは既に日本で種牡馬入りしていますが、これらを超える絶対的地位を確立するには、さらなる勲章を胸に輝かせたいもの。西川オーナーは「可能性があればBCも」と大きな夢を抱いておられるようです。アメリカのファンも稀代のアメリカンヒーローが送り出した異国育ちのドリームホースの“凱旋帰国”を大喜びで迎えてくれるでしょう。アメリカが生んだ誇り高いヒーローの血が日本の地で花開き繋がれていく、アメリカのファンに申し訳ないのですが、そんなドラマもまた一興です。