2022.02.16

ロードカナロアの砂適性

ロードカナロアが“常勝将軍”ディープインパクトを従えて、リーディングサイアーの首位をひた走っています。年明けの中山競馬場を舞台に、開幕週の金杯2000mをレッドガランがゴール前で力強く抜け出し、翌週のAJC杯2200mはキングオブコージが地力の違いを見せつける圧巻の捲りで貫禄を誇示しました。必ずしも彼自身が得意としたわけではない異種カテゴリーで勝ち切るあたりに、種牡馬としての奥の深さを感じさせました。充実度を増す近年は安定性に磨きがかかり、現在トップを走る勝利数の中味は、芝でもダートでもアタマひとつ抜けた勝率を誇っています。まったくスキを感じさせない競馬ぶりで王者への道を走っています。

しかし敢えて“アラ捜し”すれば、高いレベルで勝敗を決する重賞レースの内容を吟味すると思いがけない“課題”に突き当たります。ここまでJRA重賞は海外G1の3勝を含めると通算48勝と素晴らしい実績を残しています。が、そのうち芝47勝に対してダートはG3根岸Sの1勝だけという内訳です。砂に特化した交流重賞でも、G1JBCスプリントなど2勝だけという寂しさです。いずれも今週のG1フェブラリーSで大きな期待を集めるレッドルゼルが勝ち取った勲章です。“芝の絶対女王”アーモンドアイの向こうを張って、“砂王”ルゼルと言ったら誇大アピールでしょうか?

血統的にロードカナロアは父キングカメハメハ同様に、いやそれ以上かもしれないダート向きのポテンシャルを蓄えています。父は後輩のディープインパクトが芝に偏った大種牡馬であったのに対して、芝砂兼用のオールマイティサイアーとして重宝され、“幸せの使者”のように生産者、馬主、厩舎スタッフなど無数の関係者を大喜びさせました。母系からは母父ストームキャットを先頭に、スピード&パワーのハイブリッドを目指す血筋を代々導入して来ました。その配合から授かった馬体も、一口に“筋骨隆々”として惚れ惚れとさせる偉丈夫に出ています。ファンを唸らせるようなダート競馬の大物を輩出して不思議のない条件が揃っています。

現状のままでもカナロアは、いずれリーディングサイアーの座を奪取できる器でしょうが、アーモンドアイまでは難しくても、それに近づくようなダート界の傑物を出してくれないものでしょうか?今週のフェブラリーSは、そんな意味での試金石になるかもしれません。ルゼルは昨年4着、でも悲観するほどの内容ではなかったと思っています。距離適性に疑問符がついた当時は、川田騎手が控えめに丁寧に丁寧に乗っての結果ですから、むしろ今年に夢を繋いだとも考えられます。以後、昨春のG1ドバイゴールデンシャヒーンではキックバックがキツく差し馬には厳しいメイダンの直線一気に追い込んで2着、砂の深い小回り金沢1400mのG1JBCスプリントは余裕綽綽(しゃくしゃく)にも映る楽勝でした。ぜひロードカナロアの“戴冠”に華を添える晴れやかな勝利を決めてもらいたいですね。