2022.01.27
世界一という“ご褒美”
IFHA(国際競馬統轄機関連盟)が高級時計や各種競技用の精密計測機のロンジン社の熱心なスポンサードで集計・編集している競馬の貴重な定点観測データの2021年分が発表されました。IFHAからは大まかに2種類の統計データが弾き出されます。一つは「ロンジン・ワールド・ベスト・レースホース・ランキング(LWBRR)」というタイトルで、昨年1年間に出走したサラブレッドを対象として、1頭ごとにレーティングを付与し国際ハンデキャッパー会議で承認されたランキングです。昨年の“実力世界一”に認定されたのは、ブリーダーズCクラシックを制圧し、一昨年のブリーダーズCダートマイルに続いて“二階級制覇”を成し遂げたニックスゴーでした。ご存じのようにアメリカ調教馬ながら、馬主はKRA(韓国馬事会)という変わり種。ブリーダーズCシリーズで日本から遠征したマルシュロレーヌやラヴズオンリーユーが大金星を挙げたように、“競馬の風”は今やアジアから吹き始めているのかもしれません。
“アジアの風”と言えば、世界ランキングでコントレイルは5位、エフフォーリアは10位と堂々のベストテン入りを果たしています。世界のどんなに格が高いレースでも、出ようと思えば無条件でゲートインできるレベルです。それに続いて香港ヴァーズのグローリーヴェイズ、ジャパンC2着オーソリティ、有馬記念2着ディープポンドも上位にランクされ、クロノジェネシス、グランアレグリアの女傑たちも輝きを放っています。“日の丸サラブレッド”が頑張った1年でした。本当にご苦労さまでした。
さて、2種類の統計データと言いましたが、もう一つは「世界のトップ100G1競走」と名付けられたランキングです。タイトルが示すように世界中のG1レースに出走したサラブレッド1頭1頭のレーティングをベースに、上位4着馬までの平均値を当該レースのレーティングとし、レース個々のレベルを理解する参考にしようという試みです。昨年のベストレースは凱旋門賞、2位がニックスゴーの傑出したパフォーマンスが認められたブリーダーズCクラシック、3位がキングジョージ6世&クイーンエリザベスS、いわば“ランキング上位の常連”が指定席に座った形ですが、4番目に日本の天皇賞(秋)が大躍進しています。世界競馬の主流を形成する2000m級のG1レースでは、何と世界一という高評価です。これは嬉しいですね。英愛両競馬大国のチャンピオンSを押しのけて、“玄人受け”して常に上位に推されるインターナショナルSやエクリプスS、オーストラリア名物のコックスプレートを抑えてのナンバーワンは誇らしい気持ちで一杯です。
2000m級カテゴリーで見に余るほどの栄光に浴せるのは、大げさに言えば世界トレンドの先頭で風を切って走るような気分です。コロナ禍で順調なばかりではなかった競馬環境でしたが、幸いにも日本ではJRAをはじめとする主催者、馬主さん、牧場・厩舎関係者などホースマンみんなの頑張りで無事にやり遂げることができました。今回のロンジンとIFHAからいただいた過分な評価は、その“ご褒美”なのかもしれません。いずれにしろ、ありがたいことでした。“ご褒美”を今後の糧として、どう生かしていくのか?そんなあれこれを考えていきたいと思っています。